Autono-MaaSという概念から誕生した次世代モビリティ「e-Palette 」
2018年1月、米国はラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー展覧会「CES」において、豊田社長は「クルマを作る会社から人々の様々な移動を助ける会社、モビリティ・カンパニーへと変革し、全ての人に移動の自由を、喜びを与えることができるような会社を目指す」と述べました。そして、この言葉を体現するように、電動化、コネクテッド化、自動運転化の技術を駆使した次世代電気自動車「e-Palette Concept(以下、イーパレット)」を発表。
イーパレットは、「Autono-MaaS(※)ビジネスアプリケーションに対するトヨタのビジョンを示した一例」で、ライドシェアなどの移動から、物流、輸送、リテール、さらにはホテルやパーソナルサービスに至るまで、様々な用途をサポートするオープンでフレキシブルなプラットフォームとして展開することを目的に開発されました。モビリティをたんなる“移動手段”として捉えるのではなく、多目的な使い方ができるプラットフォームとして活用することで、新たな価値を創出しようとしているのです。
そしてすでにウーバー・テクノロジーズ、アマゾン・ドット・コム、ピザハット、ディディなど、誰もが知っている大手企業と連携し、今までにないビジネスを展開しようと取り組んでいます。
※「Autonomous Vehicle(自動運転車)」と「MaaS(モビリティサービス)」を融合させた、トヨタによる自動運転車を利用したモビリティサービスを示す造語。
ソフトバンクとの協業で、Autono-MaaS を事業化
トヨタは自動運転や新たなモビリティサービスの創出を実現するために、2018年9月にソフトバンクと提携し、モネテクノロジーズという会社を立ち上げました。モネテクノロジーズは、トヨタが構築したコネクティッドカーの情報基盤である「モビリティサービスプラットフォーム(MSPF)」と、スマートフォンやセンサーデバイスなどからのデータを収集・分析して新しい価値を生み出すソフトバンクの「IoTプラットフォーム」を連携させた新しいモビリティサービスを提供する企業です。
同社では、数多ある社会問題を解決するために、コンビニ、スーパー、宅配など、業界の垣根を超えた連携が必要だとして、「MONET コンソーシアム」を設立。現在はコクヨ、伊藤園、コナミ、TOTO、フィリップス、ウェザーニュース、サントリー、ヤフーなど、多種多様な450社以上が参画し、モビリティを基盤に個々の強みを掛け合わせながら、人々の生活をより良いものへと変えるMaaS事業を次々と生み出しています。
コネクテッドサービスの強化で海外への展開も
CASEの中で、最も実現性と実用性が早いと考えられているコネクテッド。この分野に関して、トヨタは2016年にマイクロソフトと共同で車両から得られる情報集約、活用に向けて新会社、Toyota Connected,Inc.を米国に設立しました。車両通信機が装着されたトヨタ車、レクサス車から得られるさまざまな情報を集約するトヨタ・ビッグデータ・センターを運用し、より良いクルマ作りに向けたビッグデータの研究と活用を行っています。
また、2018年4月には、欧州市場のモビリティサービスニーズへの対応と情報セキュリティ対策を促進することを目的に、TOYOTA Connected Europeを設立しました。さまざまな機能を包括的に備えるトヨタのモビリティサービスプラットフォームの開発を強化し、GDPRを含む情報セキュリティ対策にも取り組んでいます。
コロナに打ち勝つ!?小型モビリティのシェアリングサービス
コロナの感染拡大によって、リモートワークや外出自粛など、人ごみを避ける、そもそも移動をしないという生活が人々の日常になりました。とはいえ、自粛が解除されてからはオフィス通勤が復活した方も多いはず。そこで注目されているのが、満員電車でのリスクを軽減するための移動手段、小型モビリティの活用です。
パーソナルな乗り物と公共交通を最適につなぎ、シームレスで快適な移動と地域の交通課題解決をサポートするHa:mo(ハーモ)という次世代の交通システムづくりに取り組んでいるトヨタは、パーク24と協業し、乗り捨て可能な小型モビリティのカーシェアリングサービスを展開しています。パーク24が運営するタイムズカープラスへの入会が必要で、現在は千代田区、中央区、港区、文京区、台東区、墨田区、江東区の7区内で利用ができます。講習不要で乗れる小型モビリティのCOMSは15分220円〜。密を避けたい、買い物でちょっと移動したい、など、小回りのきく小型モビリティならではの利用シーンは今後も増えていきそうです。
マイルート
「もっと移動したくなる未来へ」をコンセプトに、電車やバス、タクシー、レンタカー、カーシェア、サイクルシェアなど多様な移動手段を組み合わせた移動ルートの検索、乗車予約・決済、フリー乗車券の購入・利用、ルート周辺の店舗・イベント情報を提供するスマホアプリがマイルートです。同アプリには、事故や渋滞時など、道路状況を反映した交通手段や最適なルートを提案するなど、ユーザーの利便性を向上させる仕組みが取り入れられています。
対象地域は横浜、北九州、福岡、水俣エリアと限られていますが、今後、サービスとともにエリアの拡大も期待されます。
なお、マイルートは先日行われたIAAE(国際オートアフターマーケットEXPO)実⾏委が主催する「MaaSアワード2020」において、アプリ部門を受賞しました。
トヨタが描く未来都市〜ウーブンシティ構想
5月、AIやビッグデータなどの先端技術を活用したスーパーシティ構想を実現する改正国家戦略特区法、いわゆるスーパーシティ法が通常国会で成立しました。規制改革を伴う複数分野のサービスを生活に実装し、2030年ごろの「まるごと未来都市」の実現を加速させようとしています。
トヨタでは、一足先にCES2020で実証都市「ウーブン・シティ」と呼ばれるコネクテッドシティの構想を発表しました。実際に、年末に閉鎖予定の静岡県裾野市の工場跡地を利用し、2021年初頭よりまちづくりを開始するとのこと。
人々が実際に暮らす環境のもと、NTTをはじめとするパートナー企業や研究者と連携しながら自動運転やパーソナルモビリティーなどを活用したMaaSはもちろん、ロボット、スマートホーム、AIなど多様な技術を用いた新たなサービスの導入・検証を素早く繰り返し、人とさまざまなモノがつながる中で新たな価値やビジネスモデルを創出しようとしています。
トヨタとNTTの連携は、スマートシティビジネスの事業化を実現するために、長期的かつ継続的な協業関係を構築することが目的です。スマートシティー実現の基盤となるスマートシティプラットフォームを共に構築・実装・運営し、国内外の都市に展開することを目指しています。
まとめ
コロナの影響を受けつつも、大胆かつ壮大なプロジェクトに着手するトヨタ。今後の動向に目が離せません。