EVの普及を加速する東京ガスの挑戦!〜豊かな生活実現に向けた未来図〜

EVの普及を加速する東京ガスの挑戦!〜豊かな生活実現に向けた未来図〜

多久 俊平のアイコン
多久 俊平
デジタルイノベーション戦略部 エネルギービジネスイノベーショングループ EV・モビリティチーム チームリーダー
東京ガス株式会社
天羽 伸二のアイコン
天羽 伸二
デジタルイノベーション戦略部 エネルギービジネスイノベーショングループ マネージャー
東京ガス株式会社

2030年に向け、「Compass 2030」という経営ビジョンを掲げた東京ガスさま。長い歴史の中で培ってきた知見、ノウハウ、東京ガスの強みを活かし、新たな分野へ挑戦を続けています。このセッションでは現在進めてらっしゃるEV充電サービス事業をメインに、東京ガスが目指す未来について語っていただきました。

渋沢栄一を中心に創設した「東京ガス」の歴史

天羽:私たち東京ガスは、1885年明治時代に渋沢栄一を中心に創設し、135年余りの歴史を築いてきました。東京ガスグループは、この長い歴史の中、さまざまなイノベーションにチャレンジし、自らの事業と社会を変革しています。およそ50年前には日本で初めてエネルギー事業を導入し、クリーンな天然ガスを活用したモノづくり、燃料電池など新しい技術を利用してお客様の快適な暮らしづくり、そしてスマートエネルギーネットワークによる環境に優しい都市づくりなど、私たちは新しい商品やソリューション、またエネルギーの安定供給を通じて、日本を超えて世界にまで新たなエネルギーの普及拡大をリードしてまいりました。

そして現在では、ガス以外にも、270万件以上のお客様にご契約いただいている電気をはじめ、多様なエネルギーの供給〜利用まで、広くエネルギーに関わるサービスを提供しております。

東京ガスの経営ビジョン「Compass2030」とは

私たちは2019年11月、「Compass2030」という2030年に向けた東京ガスグループの新たな成長戦略、経営ビジョンを策定しました。この経営ビジョンを策定した背景には、今まで私たちが経験しなかった大きな市場環境の変化があります。脱炭素化の潮流、急速な技術革新によるデジタル化の進展、お客様の価値観の変化と多様化、そしてエネルギーの自由化の進展、これら4点の市場環境の変化に翻弄されるのではなく、大きなチャレンジと捉えて、2030年に向けてどのような姿を目指していくべきか。その内容をCompass2030の中で3つの挑戦として打ち出しました。

1つ目が、次世代のエネルギーシステムを切り開いていくためにCO2ネット・ゼロをリードすること、2つ目がお客様や社会、ビジネスパートナーと共に新たな価値を創出し、提供していく価値共創のエコシステムを構築すること。そして3つ目が、東京ガスグループの事業の柱であるLNG(液化天然ガス)のバリューチェーンを変革していくことです。

「CO2ネット・ゼロ」をリード

東京ガスグループ事業活動全体、そしてお客様先も含めて排出するCO2をネット・ゼロにすることへ挑戦し、脱炭素社会への移行をリードします。

天然ガスを有効利用することと再生可能エネルギーと最適に組み合わせること、電気・熱分野の脱炭素化、そして排出されたCO2の回収技術など、脱炭素を実現する技術開発を進め、2030年には日本の目標比率を越える1,000万トン規模の削減に貢献し、地球規模でのCO2排出削減をリードしていきたい考えです。

「価値共創」のエコシステム構築

これを挑戦に掲げた背景には、お客様の価値観の多様化がございます。お客様や地域社会、異業種企業やスタートアップを含むビジネスパートナー、自治体などとともに、新たな価値を創り出そうと考えております。このエコシステムの中で、あらゆる商品・技術・サービスをお客さまに合わせて柔軟かつ最適に組み合わせ、今までに無かった新しい価値を生み出し、一人ひとりの暮らしから地域社会に至るまで、さまざまな課題を解決するソリューションを提供していきます。

LNGバリューチェーンの変革

私たちの事業の中でトレーディング、製造・発電、ネットワーク、カスタマーソリューションとそれぞれのプロセスから多様な価値を創出・提供していきます。東京ガスグループが今までに培ってきた事業の技術、ノウハウを「究め込む」とともに、新たな領域を「切り拓く」。それによって、LNGバリューチェンジの各機能を最大化します。

東京ガスの「EV事業」の取り組み

多久:東京ガスは家庭用から業務用、工業用と、幅広くエネルギーを供給し、多くの方々にご利用いただいてきましたし、総合エネルギー事業者として、EVも含む最適なエネルギーをこれからも供給していきたいと考えています。ただし、EVは充電環境自体に課題があるケースも多いため、エネルギーの供給と充電環境を整えるソリューションをセットで提供することでEV化を支援し、Compass2030に掲げたCO2ネット・ゼロの実現、そして脱炭素社会をリードしたいと考えています。この2点を実現するには、多くの方々との協働が必要不可欠ですので、さまざまなパートナーと手を取り、価値共創のエコシステム構築に取り組んでいます。

上図は東京ガスが目指すイメージを示したものです。EVを移動手段、電力消費機器、蓄電池の三面で捉え、EVの導入や運用におけるコストの削減、利便性の向上、蓄電池としての活用などによる価値の最大化の実現を目指しています。

本日は、具体的な事例として集合住宅向けの安価で利便性の高い管理化ができる充電サービス事業、法人向けの設備投資や電力コストを削減可能な充電マネジメント事業についてご紹介いたします。

東京ガスが行う、EV導入検討~導入後までのサポート

相原:車を複数台所有している法人企業や自治体が、ガソリン車からEVへの切り替えをご検討される際に、EV導入前の検討段階から導入時〜導入後の運用まで、お客様それぞれが抱える課題やご要望に応じたサポートができる総合的なサービスを検討しています。

上記では、導入前、導入時、導入後の各ステップで想定される課題とそこに対してサポート可能な弊社のサービス例を示しました。たとえば、導入前では業務への影響やコスト面・環境面への効果が分からず、導入計画が立てられないという課題があった場合。東京ガスでは、お客さまの車にデバイスを取り付け、走行データを取得・分析することでコストメリット、最適な導入台数、CO2の削減効果、BCP価値、連結リスクなどを可視化し、導入計画に役立つレポートをご提示できます。

EVを導入されるタイミングでは、補助金申請や充電インフラの設置など、手間がかかる作業が多く発生します。そこでは、補助金申請対応、EVとパワコンの調達・リースを全てお任せいただくことも、初期費用を抑えた充電インフラの導入も可能です。EVの導入後に想定されるのは、運用を改善するために導入効果を把握したいといったご要望や、EV充電による電気設備の増設、契約電力の上昇に伴い追加コストの発生などが考えられます。運用の改善については、CO2排出削減量や停電時の蓄電池対応可能時間帯など、必要なデータを見える化できますし、追加コストについては、敷地全体の電力使用状況とEVの利用パターンに応じた最適な充電マネジメントを行います。

東京ガスでは、来たるEV社会に向けてお客様が効率的かつ快適に運用するためのサポート体制を整えている最中です。今後の東京ガスの取り組みに是非ご期待下さい。

個人ユーザー向け、EV充電サービスのご紹介

林:ここからは、千住事業所より、個人ユーザー向けEV充電サービスについてご紹介させていただきます。現在、集合住宅にお住まいのEVユーザーさまに向けて、管理課金が可能かつ安価で利便性の高い充電サービス事業の構築を進めております。

経済産業省が策定した2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略では、2035年までに乗用車の新車販売で電動車100%を目指すとされており、EV普及拡大の更なる加速が求められています。下のグラフを見ますと、EVに関心のある層の90%以上が自宅への充電環境整備を期待しているのに対し、マンションに設置されているEV充電設備は非常に少なく、これがEV普及の障壁となっていると考えられます。

集合住宅では共用部の電力を用いるため、利用者と利用量を管理する必要があり、現在、集合住宅に充電設備を設置する際は、管理課金つきの充電スタンドを共用する方式が主流となっています。この場合、設備コストが高いため、充電設備を共用せざるを得ず、ユーザーの利便性に欠けてしまいます。また、機械式駐車場は設置スペースをはじめ、物理的な制約も大きく導入のハードルが高い。公共の充電設備を利用する場合も、充電時の車の移動や充電待機、充電中の待ち時間など、自宅で充電できる戸建て住まいのユーザーと比べると、利便性が良いとはいえません。

これらの課題を解決し、コストを抑え、誰もが利用できるよう、私たちは集合住宅の専用の駐車場でも戸建ての様に充電できるサービスを開発しています。充電設備は、充電スタンドの価格と比べて安価な200Vコンセントを使用するため、費用面でのハードルが大幅に下がりますし、スペースの面では機械式駐車場でも物理的な制約が小さく、アプリやコネクテッドカーのデータから、誰が・どれくらい充電したかが把握できるため、集合住宅でもEVユーザーへの管理課金が可能になります。

このサービスは充電サービスの管理・運営を行っているユビ電さまと連携して行う予定で、ユビ電様に業務システム基礎を提供いただき、フロント部分を東京ガスが運営するモデルを検討中です。

充電サービスの管理・運営を行っている「ユビ電」さま

山口:ユビ電株式会社代表取締役社長の山口典男です。ユビ電株式会社は、「ユビキタスな電気」の頭文字をとって名付けた会社です。

今、電気はあらゆる場所で利用できますよね。そこでもう一つ私たちが付け加えたかったのは、出先で電気を使いやすくすることです。誰かが作った電気を、誰の何に使うのか。その「誰の何に」という部分に着目して、出先で電気を使いやすくする方法を捻出し、開発したのが『WeCharge』というサービスです。個人の利用情報にもとづき、EV充電コンセントでも、電気を提供する人と電気を利用したい人とをつなぐサービスとして誕生しました。

おかげさまで好評をいただき、とくにマンション住まいの方の自宅での充電や、出先のパーキング、ホテルなどの宿泊施設などで、We Chargeのコンセントを取り付けたいという方が増えています。そこでお客様のニーズに応えるべく、東京ガスさまの強みを合わせた新しいサービスをコラボレーションで開発させていただくことになりました。We Chargeの強みと東京ガスさまの強みを合わせた新しいサービスとして、期待を上回るサービスへと育てたいと思っています。

実際のサービスの流れ

林:山口さん、ありがとうございました。

ここからは、実際のサービスの流れについてご紹介します。本サービスは、200VコンセントとQRコードを設置するだけで管理課金が可能になります。

まず、EVユーザーがご帰宅されましたら、占有駐車場のコンセントにコードを挿します。コンセントに付随されているQRコードを読み取ると、充電場所と時間あたりの料金が表示されますので、充電時間を指定して充電を開始。この操作によって、初めて充電が開始されますので、盗電の心配もございません。

本サービスは目的地充電など、ご自宅の外で充電するユースケースにも対応していく予定ですので、サービス利用者は外出先でもQRコードを読み取るだけで充電ができるようになります。

総合エネルギー事業者としての挑戦

東京ガスにとって、EV事業は新しい挑戦です。しかしながら、総合エネルギー事業者として培ってきた知見や首都圏の事業基盤を活かせる領域ですので、業界の垣根を超えてさまざまな企業、自治体、お客さまと連携しながら、脱炭素社会とお客さまの豊かな生活の実現にむけて、事業開発を推進してまいります。本日ご紹介した集合住宅向けの管理課金が可能な充電サービス事業、法人向けの設備投資や電力コスト削減が可能な充電マネジメント事業を始め、お客様のEV化実現に向けた脱炭素化や利便性の高い移動の実現、スマートな充電や蓄電池としての活用によるEVの価値向上に取り組んでいきたいと思っています。本日ご紹介した集合住宅向け事業、法人向け事業にご関心を持った方はぜひご連絡ください。ありがとうございました。