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スズキが挑戦する持続可能なモビリティサービス

スズキが挑戦する持続可能なモビリティサービス

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熊瀧 潤也
次世代モビリティサービス本部 コネクテッド部長
スズキ株式会社
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菅谷 俊雄
CSO
株式会社スマートドライブ

今年2月に発表した新中期経営計画で、カーボンニュートラルの流れの中、電動化技術の開発、製品への全面展開を打ち出したスズキさま。変化を余儀なくされる自動車業界で、どのような挑戦をお考えなのでしょうか…? 
対談の前半では、2019年に本イベントで講演されたインドでのコネクテッドサービスの進捗についてもご紹介いただきました。

2019年から2年。インドでのコネクテッドサービスは今…

菅谷:熊瀧さんは、2019年に開催した「Mobility Transformation」にもご登壇され、50%以上のシェアを誇る、インドでのコネクテッドサービスについてお話しいただきました。インドという発展途上国ならではの社会問題、交通事故、渋滞、盗難といった課題とデジタル大国というポテンシャルの高さに加え、現地のユーザーのニーズに即したサービス作りについてご説明されていたのが印象的でしたが、その後、インドでの取り組みはどのように進んでいるのでしょうか。

熊瀧:お客様が求める機能を聞き取り、それを落とし込んだコネクテッドサービスをリリースしましたので、機能に関してはお客様にも好評をいただいておりますし、実際に利用された方からは、「価値がある」という評価をいただいております。私たちもインドでのサービスは初めてでしたし、なかなか繋がらないとか、アクティベートにならないとか、小さなトラブルもパラパラと発生しましたが、運用を学びながら、着実に台数を伸ばしています。

まだまだ、じっくりと浸透を図っているところですが、ご存知の通り、現在のインドはコロナで状況が悪化の一途を辿っており、車の販売自体が低調と言いますか…。ロックダウンの影響で、思い描いていた通りに普及していませんが、新たに市場に投入される新モデルには必ずコネクテッド機能が付けられるようになってきましたし、コネクテッドカーが一般ユーザーへ浸透しつつあることは実感してございます。今後も機能を発展させ、インド市場に浸透させていこうと取り組んでいるところです。

菅谷:短期的な要因はありつつも、長期的なトレンドとしては、ニーズは変わらないということですね。

熊瀧:認知が広がっているのは事実ですから、私たちがリーディングメーカーとして、いかに市場に浸透させていくかを意識していますね。

菅谷:ターゲットとされている顧客セグメントは、どのようなお客様ですか。

熊瀧:インドで車を購入できるのは、基本的に富裕層の方々です。スズキのインド部門には、少し上級セグメントの車を販売しているNEXAチャンネルという販売店がございまして、そのNEXAチャンネルの車種に絞って車種を展開しています。

菅谷:データもだいぶ蓄積されてきたのではないでしょうか。

熊瀧:ある程度、蓄積されてきましたので、車両の不具合について原因究明に活用できるとか、データの活用について社内でも活発に意見が出て、データが価値へと変わりつつあることを実感しています。まだ始まったばかりですし、深掘りすべきところも多くある。このデータをどのように発展させていくか、価値に変えていくかがこれからの私たちの仕事であり、使命ですね。

菅谷:都市部からはじまり、徐々に農村部へと広げていくような、そんなイメージでしょうか。

熊瀧:そうですね。つながらなければコネクテッドサービスとして成り立ちませんので、ある程度、通信環境が整っている、担保されている地域を重点的に進めることになります。そうした地勢的な状況を見ながら進めています。

カーボンニュートラルに向けてスズキが取り組むこと

菅谷:昨今、世界的な潮流として脱炭素化が謳われており、日本の政府も2050年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする方針を発表しました。そのため、自動車メーカー各社は、さまざまな対応、取り組みを始められています。御社は、今年の2月に発表した中期経営計画で電動化の推進、品質向上を掲げておられます。こちらについて、少しお話を伺えますでしょうか。

熊瀧:世界的なカーボンニュートラルへの流れは、自動車メーカーにとって潮目が変わったことを意味しています。車の電動化は避けられない流れですが、まずはここ最近、品質問題でお客様にご迷惑をおかけしてしまった事実を受けて、まずは自分たちが作る商品に対して確実に品質を担保することが何よりも重要だと痛感しました。本当に深く反省しておりますし、盤石の体制を築いて今後も取り組む所存です。

そして、それと並行して電動化へ挑戦します。私たちのセグメントは小型車、日本でいう軽自動車です。「小・少・軽・短・美」の哲学にもとづいて、達成していこうと。小型車セグメントは、コストを含むさまざまな面で、普及が進みにくいだろうと言われていますが、私たちにとって、それこそが大きな挑戦になるのです。

小型車のエキスパートとして、日本における軽自動車、「生活の足」、そして、新興国においての「新しい足」になること。私たちが今まで提供してきた価値は、そういう身近なツールになることですから、この価値を損なわないように電動化を進めていこうと思っています。非常にやりがいのある挑戦です。

これからの時代は協業が欠かせない

菅谷:電動化については、スズキさんしかできないアプローチがあるかと思います。また、中期経営計画では、トヨタさんをはじめ、各種提携を進めていらっしゃいますが、提携による環境技術の開発、サービスづくりについて、どのようにお考えでしょう。

熊瀧:他社さんと比べれば多いとは言えませんが、スズキは今まで培ってきた確固たる技術力を持っています。もちろん、各社、強い高い技術力を持っていますが、この激動の時代で成長を続け、ビジネスを拡充するには、質だけでなく量も必要になる。そういう視点でパートナーを求める企業が増えていますし、私たちとしてもその思惑が一致したことで、トヨタさん、他社さんと共に開発を進めていこうと考えました。少しでも技術革新と拡充に貢献できるように、技術パートナーシップを進めているのです。

菅谷:技術の開発に限らず、より広い考え方として協調領域を広げていくという考え方が世の中に浸透してきました。御社もそのような考え方に則って、協業を進めてらっしゃるのでしょうか。

熊瀧:協調して技術力を高めていくこと、この流れは今後さらに加速していくでしょう。電動化、そしてつながる技術についても協業が広がっていますが、今までになかった、異なる領域同士がつながってきている実感がありますね。それによって、さらに協調領域が広がっていくと言いますか。

そこで着目すべきが、競争領域の定義です。これからは、スズキとして、お客様にどのような価値を提供できるのか、どんな体験を提供できるのかが勝負のポイントになってくる。そうすると、今までの「モノ/ プロダクト・製品」から、もう少し「コト/ 体験・サービス」を重視したサービスや価値をお客様へお届けしなくてはなりません。車だけでなく、サービスも含めてお客様に価値を提供する、そういう流れになってきたということです。スズキでも会社としてそこに本気で取り組んでいこうと、次世代モビリティサービス本部を立ち上げました。

菅谷:熊瀧さんが初回のカンファレンスにご登壇されたときは、次世代モビリティサービス本部のチームメンバーがほんの数名でしたよね。

熊瀧:今はおよそ80名が所属しています。3〜4年前、私一人でスタートした時のことを思い出すと、ずいぶん成長したなと。もっと大きな組織にしたいので、これからも仲間づくりは続けていきますよ。

菅谷:やるべきことが山ほどありますしね。そのメンバーは社内で集めてらっしゃるのでしょうか。

熊瀧:社内のあらゆる部署から多種多様な人材を集めつつ、キャリア採用にも力を注いでいます。80人のうち2~3割は、キャリア採用のスタッフです。

菅谷:他社との人材交流も同時に進めていこうとお考えですか。

熊瀧:そうですね、さまざまな知見と経験が必要ですから。外部から即戦力を引き抜くこともありますし、幅広い経験を積んでらっしゃるパートナー様、業者様の力もお借りしないと進めて行くことが難しい。ですから、人材交流を含めたパートナーシップは、積極的に行っています。

サービスとしてモビリティを提供する

菅谷:ここで今一度、カーボンニュートラルの話題に戻したいと思います。軽自動車は、サイズやコスト面を考慮すると電動化は不利だと言われておりますが、そこに対してどのようなアプローチをお考えでしょう。

熊瀧:総体的に考えると、非常に不利であることは自覚しています。ただ、その中でもまずは挑戦することが大事ですので、まず、コスト面に関しては、ギリギリのところを突き詰めていく。これは必須項目です。バッテリーやモーターユニットをシンプルに、安価で開発できる技術を持った企業と協業することも踏まえ、オープンイノベーションで臨むべきだと考えています。

当然、自社の技術向上にも全力で臨みますが、今まで軽自動車や小型車を購入されたお客様が、同じ価値を提供する車に2倍のお金を払うことは考えられません。ですから、そこは車の購入をゴールに置くのではなく、移動そのものの価値を上げ、利用していただくことに重きを置く。モビリティサービスとして、今まで叶えられてきた移動の自由を保証していくというように、考え方そのものをシフトしなくてはならないと感じています。

菅谷:モビリティサービスを構築し、普及をさせていく際に鍵となるのは、現在今、走っている車へのアプローチかと思います。そのアプローチ方法について具体的に教えていただけますか。

熊瀧:カーボンニュートラルの議論って、2050年までに温室効果ガスの排出量ゼロにするとか、2030年までに削減率何%とか、カウントの仕方が、そのときの販売車台数がベースになっているでしょう。しかし実際にCO2を排出しているのは、“いま”走っている車、既販車です。ですから、やっぱりここを本質的に減らすことも視野に入れていかなければなりません。

自動車メーカーが車の数を減らすなんて、本当は言ってはいけない話なんでしょうが…自動車メーカーだからこそ、具体的に何をすればCO2を減らせるかを考えていくべきだと考えています。車を効率よく利用すること、少ない移動で今までと同じ価値を提供すること、そして同じ移動距離でも今以上に燃費を良くすること。運転の仕方や車の使い方、使用する時間帯によっても燃費が変わりますから、この3点を実現できれば、全体でCO2の排出量を減らしていける。私たちとしても、そうしたサービスの提供を目指していきたいですね。

菅谷:現在、走っている車の台数が日本国内だけでも7,000万台ほどありますから、少しずつ変えていくことで大きなインパクトになるのではないでしょうか。

熊瀧:そこをないがしろにするべきではないですし、そこにビジネスチャンスがあるはずですから。

現状の見える化が、新たなサービス開発のカギとなる

菅谷:それを実現するのは、現在、道路を走行している車が普段からどのように使われているのかを、データとして見える化していくことが大事です。

熊瀧:そうですね、燃費を減らすと言っても、現状を把握していかなければ、どれだけ削減すべきかがわかりませんし、有効な対策を講じることができません。理想は可視化して見えた課題に対して、どうアプローチするかを含め、サービスとして提供できること。

ただ、私たちはそうした知見も経験も持っていませんから、スマートドライブさんのご協力のもと、さまざまな実証実験を行い、可視化を進めてきました。これからも、お客様のニーズをはかり、適切なアプローチを取るために、データ収集と現状の可視化を推進し、お客様へアプローチしていきたいですね。

菅谷:データを集め、可視化することで、サービスに対するニーズも明確になっていくのではないでしょうか。

熊瀧:はい。お客様自身が見えていなかった部分が可視化されることもあるでしょうし、私たちもそれを見ることで、お客様に対してどのような価値が提供できるのかを考えることができます。そこを突き詰めていきたいですね。

菅谷:スマートドライブが提供している車両管理サービスでは、運転や走行状況をデータとして取得し、普段、各ドライバーがどのような運転しているかが見える化できます。そのデータをもとに安全運転、エコドライブを促すことで、事故の防止やCO2排出量の削減にもつながり、結果として、エンドユーザーのビジネスにも、社会的にもプラスの効果があると考えています。

熊瀧:日常的に車両を利用する業者さんからすれば、新たなサービスの導入を検討するにあたって、社会的にCO2を減らすことよりも、ビジネスにメリットがあることが必須条件になる。ですから、ビジネスへのメリットを確実に担保しつつ、結果としてCO2の排出量削減が実現できるというのが、現実的なアプローチになると思います。

スマートドライブさんとお付き合いが始まったのは2年ほど前からでしょうか。弊社の常務あてにお手紙を頂戴して。モビリティ業界が急激な転換を迎えようとする中、試行錯誤を繰り返していた頃でしたので、藁をもすがる思いでまず話をお聞きしてみよう!と前のめりになったことを覚えています。スマートドライブの代表、北川さんが浜松までいらして、実際にお話を聞いたら、もう目から鱗で…。是非とも、一緒にお仕事させていただきたいと、すぐに行動へ移し、さまざまな実証実験を行ってきました。

実証実験では、本当にいくつもの大きな発見がありましたね。当時はコネクテッドサービスの開発に手一杯で、その先のフリートサービスやモビリティサービスの運用体制が整っていませんでしたが、それを今、やっと整えることができましたので、スマートドライブさんともう少し協業の幅を広げていきたいなと思っています。人の交流を含め、サービス開発ができるよう、引き続きよろしくお願いします。

菅谷:ありがとうございます。スマートドライブでは後付けデバイスを自社で開発していますが、熊瀧さんがおっしゃるように、今、走っている車からより多くのデータを集めて可視化すことに本当に意味があると思っています。ですから、今後も一緒に取り組みながら、来るべき時代に向けて新たなサービスを構築していきましょう。

熊瀧:将来的に販売する車はコネクテッドカーというアプローチで進めつつも、今、重視すべきは既販車へのアプローチ。シンプルかつスマートな仕組みが肝になりますから、多数の経験値を持つスマートドライブと進めていくことが近道かつ有効な手段になると考えています。早く実現すること=お客様へ早く価値を提供できることになりますから、ともにより良い自動車社会を実現するために、手を組んでいきましょう!

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