英国の老舗自動車メーカーが切り開く未来のモビリティとは?

英国の老舗自動車メーカーが切り開く未来のモビリティとは?

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マグナス ハンソン
代表取締役社長
ジャガー・ランドローバー・ジャパン株式会社
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北川 烈
代表取締役社長
株式会社スマートドライブ

直面する気候変動問題を克服しようと、各国が脱炭素社会を前進させる目標を発表しています。エンジン中心からEVへ、大きな転換を求められている自動車業界では、実際にどのような取り組みが進んでいるのでしょうか。2025年からすべてのジャガー・モデルをフルEVにすると発表したジャガーランドローバーさま。
この短期間で大きな目標を成し遂げるために、どのような戦略を掲げ、どのような思いを胸に挑戦し続けているのか。スマートドライブの北川が同社日本法人社長のマグナス・ハンソン様に直接お伺いしました。

ジャガー・ランドローバーのアップデート情報について

北川:このセッションでは、ジャガー・ランドローバーの代表取締役であるマグナス・ハンソン様にジャガー・ランドローバーの取り組みやEVを含む電動化の戦略について伺います。

マグナス:また、こうしてお会いできてうれしいです。前回のカンファレンスも楽しませていただきましたが、当時はパンデミック前でリアルなイベントでした。今回は世の中がこのような状況ですので、オンラインという、新しい手段でのカンファレンスになりましたね。

弊社では今回、多くのアップデートがあります。日本国内においては、新規の販売代理店もいくつかオープンし、新しいグローバルでのコーポレートアイデンティティもアップデートさらには、EVを含む新しいラインナップも発表しています。直近のリリースとしては、LAND ROVERの象徴的なモデルであるDEFENDERを復活させ、その最新モデルを発表。また、UK本国とCASEのような新しいテクノロジーの開発を共同で行い、今後、お客様に提供していけるよう進めているところです。詳細については、こちらの動画をご参考ください。

今後20年の新しいビジョン「Reimagine」について

北川:ありがとうございました。この先、5年、10年、20年先の未来について、お話を伺えますか。

マグナス:今、非常にエキサイティングな時期に差し掛かっています。今年の2月には、今後20年の新しいビジョンとして「Reimagine」を発表しました。サステナビリティと英国的な未来志向デザインの観点から、いかに素晴らしい顧客体験を2つのブランドで提供できるかを語っていますので、ぜひこちらの動画もご覧ください。

動画:みなさま、こんにちは。ジャガー・ランドローバーのビジネスの中心である、ここ英国のゲイドンから、最高経営責任者(CEO)として皆様にお話しできることを嬉しく思います。そして、ジャガー・ランドローバーの「REIMAGINE」戦略を皆様にお話できることを誇りに思います。英国の2つのブランドを通じて、デザインによるモダン・ラグジュアリーの未来を再構築していく戦略です。

「REIMAGINE」の中核となるのは、独自の個性を持つジャガーとランドローバー、両方のブランドの電動化です。電動化は、私たちにとって本当にエキサイティングなことです。静けさ、落ち着き、滑らかな乗り心地、旅の快適さ、それらすべてを通じて、当社のクルマでラグジュアリーを表現していきます。ピュアEVを推し進めることは、次なるステップとして自然なことです。電動化によって、心地よい経験を増幅し、モダン・ラグジュアリーなクルマがあるべき姿をすべて体現していきます。マテリアルや、光、形、匂いなどの要素を介して、当社のクルマに対する物理的そして視覚的な感情を高めます。ラグジュアリーとは、クリーンであることです。

ジャガーとランドローバーの各ブランドは、独自のパーソナリティを明確に持った、別々のアーキテクチャーを構築します。感性に訴えかける豊かな歴史に裏打ちされた個性がお客様にモダン・ラグジュアリーの2つの異なる選択肢をご提供します。ランドローバーは、世界をリードするデザインと堅牢なエンジニアリングおよび革新的なテクノロジーを組み合わせて、セグメントで最も有能なSUVのキュレーターであり続けます。そして、3つのファミリーを通じて、モダン・ラグジュアリーを提供します。

「RANGE ROVER」は人生のリーダーたちに比類のない洗練性を、「DISCOVERY」は現代のファミリーに日常の多様性を、「DEFENDER」は21世紀の探検家たちに飽くなきアドベンチャーをもたらします。ランドローバーは、今後5年間で6種類のピュアEVを投入します。ランドローバー初となるピュアEVモデルは、2024年に登場する予定です。同時に、ジャガーはピュアEVのラグジュアリー・ブランドとして再生します。感性に訴えかけるデザインと、次世代を切り拓くテクノロジーを備え、非常に新しい美しい新たなポートフォリオを提供するピュアEVのラグジュアリー・ブランドとして生まれ変わります。

市場において新しいラグジュアリーのポジションを確立することは、お客様だけでなく、ビジネス全体にとっても、独自の可能性を実現することができます。この取り組みは、すでにスタートしています。このようなパワフルなブランドの歴史において、新たな章を描くということはとてもエキサイティングで刺激的です。私は心から期待しており、きっと皆様にも楽しんでいただけるものになると信じています。

当然のことながら、その過程では、私たちはブランドが持つ純粋な個性と開発中の次世代電動化技術を守るための決断をしなくてはなりません。具体的には、「XJ」のネームプレート自体は存続する可能性はありますが、今後発売するべく開発を進めていた「XJ」後継モデルは、ジャガーの新たなラインアップには含まれません。「REIMAGINE」戦略によって、私たちは電動化に特化したビジネスに移行していきます。2030年までに、この目標を達成します。ネームプレートごとに、すべてのモデルがフルバッテリー駆動に対応します。

2030年までに、ジャガーでは100%、ランドローバーでは約60%に、テールパイプのない(排気ガスの出ない)パワートレインを搭載する予定です。2026年からディーゼル・エンジンを段階的に廃止し、2036年までに排出ガス量を実質ゼロにします。しかし、私たちは電動化のみを目指しているわけではありません。水素経済が世界の産業界でクリーンな脱炭素化のソリューションとして加速していくなかで、燃料電池技術は理にかなった補完的なステップとなります。将来の自然エネルギーの採用に備え、今年、英国の道路でプロトタイプを使ったテストを開始します。

私たちが電動化を加速することは、2039年までに企業としての炭素排出を実質ゼロにするという目標の実現につながります。そして、その目標に向けて、私たちの活動すべての中心にあるのは、サステナビリティ(持続可能性)です。マテリアリティ、エンジニアリング、マニュファクチャリング、サプライチェーン、R&D投資、サービスなどが、ひとつのチームとして、すべてのチャネルやビジネスのタッチポイント、ブランド、そしてカスタマーエクスペリエンスを横断して活動していき、すべて私に直接レポートがくる体制とします。

サステナブルで責任のあるラグジュアリーを再構築していきます。「REIMAGINE」は私たちの明確な戦略です。そして私たちは全速力で走り続けていくことをお約束します。私たちは、ビジネスと2つのブランドの明確な方向性を示すロードマップを設計しました。製造のオペレーションを簡素化し、より迅速なビジネスを行います。

タタ・グループを含むパートナーの皆様に敬意を払い、サステナビリティ、テクノロジー、コネクテッド・サービス、お客様のためのデジタル化に向け、私たちは熱意をもってビジネスを推し進めます。そして、ジャガーを、美しく感動的なデザインと次世代技術の新しいポートフォリオを備えたピュアEVのラグジュアリー・ブランドとして再生させます。ラグジュアリーSUVセグメントにおける世界的リーダーであるランドローバーも、電動化でさらなる強化を図ります。異なる個性をもった、2つのブランドですが、どちらも、ジャガー・ランドローバーのデザインによるモダン・ラグジュアリーの未来を支える品質とサステナビリティという要素によって結び付いているのです。これが「Reimagine」戦略です。ありがとうございました。

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マグナス:ここで重要なポイントがいくつかあります。1つは、素晴らしい未来的な顧客体験を提供し、かつサステナブルであることです。2039年までに事業全体で完全なカーボンニュートラルを、そして2030年までにすべてのラインナップにおいてEVモデルの提供を目指しています。2025年にジャガーは純然たるEVブランドとして生まれ変わり、ランドローバーは、6つのEVモデルをリリースすることになります。これらのエキサイティングなリリースを通して、未来の顧客体験を提供してまいります。

I-PACEについて

北川:ありがとうございました。私も以前、I-PACEに乗車させていただきましたが、非常に素晴らしい体験だったことを覚えています。まずはEVに注力されるということですが、I-PACEについてもう少し詳しくご解説いただけますでしょうか。

マグナス:私たちは、2018年にI-PACEというEVをリリースしました。2018年の時点でも、「美しくて速い」というジャガーブランドに恥じないクオリティと体験を提供できたと思っています。

今後もEVモデルを順次リリース予定ですが、すでにクオリティの高いEVを提供していますし、それは私自身も、会社としても、非常に誇り高きものです。お客様も心から喜んでくださっていますし、業界のエキスパートにもしっかり認知、評価されていると感じます。実際、2019年には「ワールド・カー・アワード」を3部門同時受賞するという、史上初の快挙を成し遂げることができました。「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」本賞、デザイン部門、グリーン部門の3部門です。とても誇らしい結果ですし、これらの評価は、私たちの未来や今後の取り組みについて自信を与えてくれました。

北川: 2025年までにすべてのモデルをピュアEVすることを掲げ、まずは、I-PACEをリリースされましたが、その先の戦略についてもお伺いしたいです。

マグナス:I-PACEは私たちにとって最初のフルEVモデルです。ジャガーブランドは2025年からEVモデルのみとなりますが、移行期間においては、ブリッジとなるテクノロジーが必要です。具体的には2種類のハイブリッドモデルを予定しており、1つがマイルドハイブリッド、もう1つがプラグイン・ハイブリッドモデルです。プラグイン・ハイブリッドは、ジャガーブランドの多くのモデルに採用されることになっており、今年の5月には、ジャガー初のプラグイン・ハイブリッドモデルとなる、E-PACEをリリースしました。

プラグイン・ハイブリッドのユニークな点は、EVのみで50km以上の航続距離を確保できるため、日常のちょっとした用事であればEV走行、長距離移動をする場合はガソリンエンジンとシーンに合わせて切り替えが可能なところです。ハイブリッドは、フルEVモデルへのブリッジとなるテクノロジーであり、重要な役割を担うものだと考えています。

北川:私も実際に2年前、I-PACEに1週間ほど乗車させていただき、いろんなところへ行きましたが、EVなのに加速の反応が良いですし、車内は非常にラグジュアリーで、今までにない心地良い走りを体感しました。単なるEVではない、高品質な体験ができる。それこそがジャガーブランドの強みであり、特徴だと思っています。

ランドローバーについて

マグナス:ありがとうございます。その感想は、私たちのテクノロジーがジャガーブランドとしてお客様の期待に応えるものだったことを証明してくださるものとして、非常に有益です。逆に、納得のいくクオリティで提供できる確信がなければ、リリースしないこともあるんです。私自身も北川さんと同じイメージを持っていますが、北川さんの言葉で率直な感想を伺うことができて光栄です。

ここからさらに進化を続けて行きますが、弊社のテクノロジーの進化は、ジャガーのみならず、ランドローバーブランドにも適用します。ランドローバーも、将来的にEVはもちろん、プラグイン・ハイブリッドのようなブリッジテクノロジーを導入していく予定ですし、現在もレンジローバー、レンジローバースポーツではプラグイン・ハイブリッドモデルを提供しています。これらの車種は、一定の距離をEVのみで走ることができますし、週末のロングドライブではガソリン燃料を使用した長距離走行も可能です。

これらのブリッジテクノロジーは、他のすべてのランドローバーラインナップにも導入されていきます。つまり、次世代のフルEVラインナップへの準備期間中も、ランドローバーのブランドに恥じない顧客体験が提供できるということです。一般的にジャガーより、ランドローバーのほうが車体サイズは大きいので、高いクオリティのフルEVを提供するには、ランドローバー向けにテクノロジーを進化させなくてはなりません。今後5年間で、6つのフルEVモデルをランドローバーでリリース予定です。

ブリッジテクノロジーが重要な理由

北川:今年の1月に、日本の政府は「2035年までに新車販売で電動車(EV)100%を実現する」と表明しました。ただ、いきなりそこへ到達することは困難ですので、おっしゃられた通り、ブリッジのテクノロジーが非常に重要であると実感しております。そこで、さらに質問です。なぜ、間をつなぐブリッジの技術が大事なのか、また、その先の技術についてもお教え願えますか。

マグナス:ブリッジテクノロジーが重要な理由は多様にあります。1つが、車の製造技術における学習とノウハウの蓄積です。車体の軽量化やエアロダイナミクスの改善など、より効率的な車の製造方法、技術向上が未来のカーラインナップの製造にも役立っていきます。2つ目が、お客様にとっても大切なことですが、EVのような新たなテクノロジーに慣れていくには、ある程度の期間が必要なためです。

現時点では、まだ多くのお客様がフルEVを購入、利用することにあまり積極的ではありません。「都内を離れると、EVステーションが見つからないかもしれない」「充電なしで軽井沢まで往復できるだろうか」など、多くの懸念事項があるからです。ブリッジテクノロジーは、EVへ移行する過程で、お客様に徐々にこのテクノロジーに慣れていただくという重要な役割を担っています。現在は、政府の方針や規制、そしてインフラの面でも、まだ整っているとは言えない状況ですし、国民全員がEVへ移行していく段階にはありません。だからこそ、このようなブリッジテクノロジーが必要となるのです。

長期的な目標はサステナブルかつカーボンニュートラルであり、EVはその手段の1つです。ただ、EVが唯一の手段になるわけではなく、燃料電池車(FCV)も重要な役割を担っていくでしょう。車の挙動そのものはEVと似ていますが、FCVは水素がベースで、パワーソースが燃料電池です。水素によって電気エネルギーをつくり、車を走らせますが、二酸化炭素を排出しないという点はEVと同じ。

ですから、ジャガー、そしてランドローバー両ブランドにおいて、今後もお客様にご満足いただけるように、EV、FCVどちらのテクノロジーも検討していくべきだと思っています。つい最近、アナウンスさせていただきましたが、現在、弊社ではイギリス政府からバックアップを受け、FCVのプロトタイプとして、新しいDEFENDERを作る実験的なプロジェクトを走らせています。典型的な車メーカーのエキサイティングなプロジェクトという意味を込めて「PROJECT ZEUS」というネーミングをつけ、EVとは別のオルタナティブとして、お客様に満足していただけるFCVを提供することを最終目標に掲げました。PROJECT ZEUSについてよりご理解いただくために、こちらの動画をご覧ください。

動画:ジャガー・ランドローバーは、水素燃料電池電気自動車(FCEV)のプロトタイプを開発しています。新型ランドローバーディフェンダーをベースに、今年中にテストを開始する予定です。このプロジェクトは、ジャガー・ランドローバーの目標である2036年までにテールパイプ排出量をゼロにすることを目指しています。水素は、エネルギー密度が高く、短時間で燃料補給ができます。低温下でも航続距離の減少が少ない大型で長距離走行が可能な車両に最適です。高温または低温の環境下での使用にも最適です。

FCVについて

北川:FCVのコンセプト自体は、昔から存じ上げていましたが、実際にこのような取り組みが始まっているところに感銘を受けました。水素で長距離を走ることができますので、環境にも優しいですし、家族や友人と遠出をする際に乗ってみたいと思いました。

マグナス:FCVについてはまだプロトタイプであり、今すぐ販売が開始できる状況ではありませんが、私たちは、2039年までに完全なネットカーボンゼロ(カーボンニュートラル)を目指していますし、2036年までにはテールパイプからの二酸化炭素の排出ゼロを掲げています。これらを実現するには、ある程度、幅のあるテクノロジーを開発していく必要がある。

EVの将来性や可能性については疑う余地がありませんが、一方で、その他のゼロ・エミッション技術についても学び、検討していかねばなりません。というのも、私たちは多種多様な車を開発し、世界中のさまざまなニーズを抱えたお客様に提供していくべきだからです。ですから、日本、UK、ヨーロッパ、オーストラリア、北米……世界中のお客様のご要望と地理的な特性も考慮していかなくてはなりません。そういう意味で、FCVについてより深く理解し、将来のお客様の多様なニーズに対応していくべきだと考えています。

また、EVとFCVは電気モーターによって車を駆動させるという意味で本質は同じですが、パワーの発生源は異なります。燃料電池の利点は、ガソリンやディーゼルのステーションと同様に水素の補充が数分で完了し、長距離を走ることができる点です。今後、充電時間が短縮されていくと思いますが、EVは充電にそれなりの時間を要します。お客様視点で考えると、燃料補充の時間が短く済むのは間違いなく大きなメリットです。一方、政治的な観点から考えると、燃料電池や水素における再生エネルギー技術の可能性も考えなくてはなりませんし、電力供給はやや複雑な話でもあります。

新しい顧客体験について

北川:本カンファレンスでは、EVシフトや再生可能エネルギーを重要なテーマとしています。EVにばかり注目されがちですが、EVへシフトしていく間の期間は、今おっしゃられたようなブリッジテクノロジーが重要となっていきます。改めてその重要性を理解することができました。

スマートドライブではコネクテッドカーのデータを収集・分析する事業を展開していますが、ジャガー・ランドローバー様としても、顧客体験向上のためにコネクテッド技術を重視されているかと思います。現在、どのような取り組みをされているのでしょうか。

マグナス:確かに、これは重要なトピックですね。

コネクテッドが重要な理由は2つありますが、1つはお客様の体験です。10年前は、車内の環境にあまり大きな変化が見られませんでしたが、テクノロジーの発達に伴い、車載端末やインフォテイメントなどが充実し、コネクテッドなサービスが誕生しました。すべてはお客様の期待に応えていくためです。ただ、顧客体験を充実させるだけでなく、将来的に車同士がつながったり、都市インフラとつながったり、クラウドとつながったり、モビリティシステム全体が進化し、統合されていくことになります。これが2つ目の理由です。

お客様のニーズに応え続けていくこと、そして、未来のモビリティシステム全体の進化、その2つの目的を叶えるために、私たちは今後も継続してテクノロジーを発展させていきます。コネクテッドカーについては、Over the Airでアップグレードしていくことができます。自動車業界ではこれをSOTAテクノロジー(Software over the air)と呼んでいますが、まさにお客様が今、スマートフォンで体験していることと同じイメージです。もちろん、車はスマートフォンより複雑ですから、多数のソフトウェアをアップデートし続ける必要がありますが、お客様からすれば、毎回ディーラーに車を持ちこむ必要がないというメリットがあります。

ソフトウェアアップデートは、自動で通知が来るので、承認するだけで車が自動的にアップデート作業を行います。まさに、大きなスマートフォンですね。車は長い年月、乗り続けるものです。新車なら10年、15年と乗ることができますが、随時アップデートが必要です。しかしそれが今後は、Over the Airで簡単に行える。これらのテクノロジーは、顧客満足度を上げるのに大切ですし、車が未来のモビリティシステムの中で長く利用されるためにも必要なテクノロジーです。

DEFENDERについて

マグナス:先ほどご紹介した新しいDEFENDERは、まさにこれらの最新の技術を備えています。ぜひ動画をご覧ください。

マグナス:DEFENDERは非常に高いプロセッシングパワーを持ち、つねにクラウドにつながることでアップデートされ続けます。このような車は、スマートフォンよりもかなり複雑な仕組みでつくられていますが、多くのモジュールを最新の状態に保つことで、車も最新の状態かつ、未来の車として機能を維持することが可能になります。現状でもすばらしい車ではありますが、今後さらにセキュリティが高く、進化した車が登場していく。弊社のみならず、業界全体がそのような流れになっていくでしょう。

コネクテッドカーがもたらす未来

北川:DEFENDERという象徴的で歴史のあるモデルにも、最新の技術が搭載されていくところが非常に感慨深いです。

スマートドライブでは、自社で開発したコネクテッドの技術で膨大な量の車のデータを解析し、保険やメンテナンスといったサービスへ活用していますが、コネクテッドの技術は、車内環境を向上させるために活用することも重要だと考えています。ディーラーに行かなくてもソフトウェアがアップデートされるというのは、利用者側から見ても大きなメリットですし、体験の向上につながる素晴らしい仕組みですね。

マグナス:そうですね。未来の車は、必然的にクラウドにつながっていることが前提になってくるでしょう。車がクラウドとつながることは、未来の車としてあるべき姿であり、それを前提に開発を進めなくてはなりませんが、将来的に車同士がデータをやり取りする可能性もありますから、プライベートなデータの扱いには注意が必要です。

車内でよく聴く音楽といった個人的なデータは、モビリティシステム全体の進化に重要だとは言えませんが、モビリティシステムを発展させるうえで、一部の個人情報が必要なシーンも考えられるでしょう。そうした観点で、コネクテッドカーにはサイバーセキュリティが非常に重要ですから、私たちはセキュリティを重視し、現在も堅固なシステムを車に搭載しています。

パートナーとのコラボレーション

北川:サイバーセキュリティやプライバシーについては今後さらに強固な体制を築いていく必要がありますが、私たちが提供する車外のコネクテッド技術と、ジャガーランドローバーさんが提供する車内体験向上のコネクテッド技術を掛け合わせれば、より素晴らしい顧客体験を提供できそうです。

マグナス:そうですね。今の時代、一社単独ですべてのソリューションを提供することは難しく、テクノロジーの進化とともにさまざまなプレイヤーがコラボレーションすることで、ソリューションが提供できるプラットフォームの必要性が増してきました。

コラボレーションは今後も必要不可欠ですし、異なるソリューションやアイデア、ノウハウを有したパートナーと協力していくことで新たな価値が創出できる。だからこそ、企業同士をつなげる重要な役割を担う、このようなカンファレンスが重要なのです。ここを起点に共創が生まれ、単独では成し得なかったサービスが提供可能になる。共創の試みは不可避であり、そうやって未来のモビリティソリューションが作られていくと思います。

弊社のパートナー企業とのコラボレーションの一例をご紹介します、

先ほど紹介したI-PACEがWAYMOの自動運転ライドシェアリング事業で採択され、2万台のI-PACEが導入される予定です。これは、ハードウェア、ソフトウェア、そして交通インフラなどが、どのように統合し適用されるかを把握する、試験的な試みでもあります。私たちが有する車の開発・デザインのノウハウとWAYMOが持つ知見を組み合わせ、共同でソリューションを提供・進化させていきます。これはあくまで一例であり、多様な企業と様々な形でパートナーシップを検討しています。

スマートシティの取り組みについて

共同で取り組んでいくべきことの1つは、「未来の都市をいかにデザインするか」です。その都市でモビリティがどのような役割を担うのか、北川さんもご存知のように、スマートシティの構想は世界中で進んでいます。日本国内でもエキサイティングなプロジェクトが進行していますが、私たちの本社に近いアイルランドでもスマートシティプロジェクトが動いており、車とテクノロジーを都市環境下で統合させ、グリッドシティを作り、安全かつエコ、そして自動化されたモビリティを提供するという構想に取り組んでいます。

各ソリューションは現在も構築中ですが、これはスマートシティプロジェクトがハブとなり、様々な企業が参画し、それによって私たちの技術を進化させていきながら、いかに貢献できるかを模索していく壮大な取り組みです。この取り組みによって、新たなモビリティ構想も大きく前進していくでしょう。

スマートシティは、ゼロから構築するケースの方が比較的容易です。ある程度の時間をかけてスマートシティをデザインし、新たに立ち上げるため、初めから新たなモビリティやサステナブルなテクノロジーが適用できますから。一方で、今ある都市に新たな技術を導入するには、私たち、さまざまな企業やヒトが一緒になって、どのように移行していくかを考えていかなければいけません。東京も、NYやロンドンも、交通などのインフラが複雑ですし、それは大規模都市でなくとも同じ。ですから、共創が大いに重要となりますし、そこで考案・開発されたソリューションが、新たに立ち上げるスマートシティで活用されるべきですが、そこで要となるのが、既存の都市をアップグレードしていくための段階的な技術です。

北川:スマートシティにはさまざまなトピックがあると思いますが、現在取り組んでらっしゃる、象徴的なプロジェクトがあればお教えください。

マグナス:スマートシティは、コラボレーションを通して学び続けていくことに尽きます。いかにスマートシティをデザインし、継続的に改善していくか。私たちを含むすべての企業が新たなテクノロジーを開発し、技術を高めていく。そうやって学んでいく過程で面白いアイデアや多くプロジェクトが誕生するからです。

つい最近、Googleが持つ空気の洗浄度合いをセンシングする技術とI-PACEを組み合わせ、Googleのストリートビューカーを走らせるプロジェクトが動き出しました。将来――もちろん今現在もですが、カーボンニュートラルな社会を実現するには、空気の清浄度合いを測ったり、モニタリングしたりすることが大切になります。そのため、ストリートビューカーが街中の空気をEVで測定し、空気の清浄度合いをお客様にも共有できるようにしました。これは一例にすぎませんが、新しい技術やサステナビリティへの流れを受けて、皆で学びながらプロジェクトを進め、より良い世の中にしていく、新しいアイデアのひとつの形です。

今後さらに多様なプロジェクトが誕生すると思いますが、その中で協力し、新たなアイデアやソリューションが生まれることで、本質的に素晴らしい街を作りあげることができると考えています。

北川:最終的なゴールに到達するためには、ブリッジテクノロジー、幅広いインフラ、データなど、幅広い視点が必要ですし、本当に気づきの多いセッションになりました。最後に、読者の方に向けてコメントをいただけますでしょうか。

マグナス:私たちは今、非常にエキサイティングな時代を生きています。今後10~15年におけるテクノロジーの進化は、モビリティの概念を再定義することになりますし、サステナブルかつ安全で、みなさんの生活の質に寄与するものになるでしょう。郊外に住んでいても、都市部に住んでいても、渋滞も少なく、よりクリーンかつ安全な環境で、誰もが質の高い生活を営めるようになるはずです。

先述したように、いち企業やいち個人が、すべてを考案し、提供するのではなく、コラボレーションやオープンなパートナーシップがこれらを推し進めていくことになります。さまざまなピースが組み合わさり、大きなパズルが完成するように。その一員として取り組めることを嬉しく思いますし、スマートドライブさんには今回このようなカンファレンスを開催し、企業のコラボレーションを促進してくださって感謝しています。

コラボレーションなしには未来のモビリティは実現されませんし、チームとして相互に学び合うことで、共に豊かな未来を創造できるのです。他の登壇者のセッションも楽しみですし、私自身、学ばせていただこうと思っています。みなさまにとっても良いカンファレンスになることを願っています。ありがとうございました。

北川:ご紹介いただいたジャガー・ランドローバー様の技術やアナウンスは、こちらのホームページにも詳細が掲載されていますので、ご興味のある方は是非ご覧いただければと思います。私も実際にI-PACEを運転して新しく、感動的な体験をしました。体験することで新たな気づきも得られるかと思いますので、是非ディーラーに足を運んで、見て、触って、体験いただければと思います。ありがとうございました。

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