Hondaが提供する二輪EV(ものづくり)とモビリティサービス(ことづくり)について

Hondaが提供する二輪EV(ものづくり)とモビリティサービス(ことづくり)について

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大里 紀雄
マーケティング部 部長
株式会社スマートドライブ
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見坊 東彦
営業部 法人販売課 東日本ブロック
株式会社ホンダモーターサイクルジャパン

二輪車は四輪車と比較して、手軽・便利・小回りがきくという特徴から、事業用としても幅広く活躍していますが、身体を露出して運転するため、交通事故が発生した場合、死亡事故に至るケースも少なくありません。実際に、2020年に都内で発生した交通事故による死者数のうち、二輪車乗車中の交通事故死亡者数は全体の25.8%を占め、昨年から4.8%も増加しました。
安全と効率を実現し、それによって環境問題にも寄与できる。「安全に永くそして適正に使用していただく」ために、2020年10月から二輪車用車両管理システム「Honda FLEET MANAGEMENT」の提供を開始したホンダさま。同サービスの機能やメリットについて、詳しくご紹介いただきました。

ホンダモーターサイクルジャパン(HMJ)について

見坊:株式会社ホンダモーターサイクルジャパンは、本田技研工業株式会社を株主とする子会社で、東京都北区赤羽に本社を構えています。

弊社は、本田技研工業で開発・生産された二輪車を、ホンダ二輪車 正規取扱店への卸すほか、純正部品やカスタマイズパーツ、ライディングウエアなどの販売も行っています。また、BtoC向けにモーターレクリエーション活動も企画・主催しています。

ここで少し、私の略歴をご紹介させてください。2014年に、ホンダ4輪ディーラーのホンダカーズへ入社後、自動車整備士を務めてきました。そこから、2017年に現在の株式会社ホンダモーターサイクルジャパンへ入社し、販売店様の整備相談窓口で修理の電話相談スタッフを担当。2020年10月より、Honda FLEET MANAGEMENTサービスの専任担当として、モビリティ分野に関するさまざまなご提案をさせていただいております。

2030年ビジョンについて

ホンダは世の中の急激な変化の中においても「存在を期待される企業」であり続けるため、2030年にありたい姿を「2030年ビジョン」にまとめ、環境面については「カーボンフリー社会の実現をリードする」という方針を掲げました。カーボンフリー社会を実現するには、電動二輪車の本格的な普及が重要であり、普及に向けた「航続(可能)距離の延長」と「バッテリー充電時間の短縮」は必須事項です。

2018年にリース販売した電動車のPCX ELECTRICは、交換式の「Honda Mobile Power Pack」を動力源とすることで、「航続(可能)距離の延長」と「バッテリー充電時間の短縮」を解決する方法を示しました。

ビジネスユース向けモデルは、パーソナルユース向けモデルと比べ、一台あたりの走行距離が比較的長いため、カーボンフリー社会を早期実現するために電動化は有効です。それに、定常的な走行ルートや距離で稼働し、充電やバッテリー交換場所が定めやすいため、動力源が交換できるHonda Mobile Power Packの効力を最大に発揮できると考えました。電動車の特性である、走行時のCO2排出量ゼロと静粛性は、環境負荷低減を求める社会から見ても、ビジネスを展開する企業や事業者から見ても、環境に配慮するクリーンなイメージを感じさせることができます。

“ジャイロe;”をはじめとした電動二輪について


ジャイロe;は、コンパクトさと坂が多い地域でも各種集配業務をスムーズに行えることを目指し、エネルギー源となるモバイルパワーパックを2個直列に接続した、96V系EVシステムを採用しています。ビジネスで使用されることを考慮し、登坂性能は30kg、フル積載時に15°、一充電あたりの航続距離は時速30km定地走行テスト値で72kmを実現しました。Honda Mobile Power packは、外部充電につないだ専用充電器にモバイルパワーパックを接続し、ゼロから満充電まで約4時間で完了します。ちなみに、充電器はAC100V、AC200Vコンセントに対応しています。

Mobile Power packは一個の重さは約10Kg程度ですし、持ちやすいハンドル形状をしていますので、無理なく運ぶことができるサイズ感です。

Honda FLEET MANAGEMENTについて

ホンダモーターサイクルジャパンでは2020年10月1日より、国内の法人企業様向けの二輪車コネクテッドサービスとして、Honda FLEET MANAGEMENTの提供を開始しました。本田技研工業の技術サポート受け、運用は弊社が行っています。

Honda FLEET MANAGEMENTはホンダモーターサイクルジャパンと、スマートドライブ社との協業で実現したサービスです。本サービスは、すでに四輪分野で豊富な実績を持つスマートドライブ社のモビリティ・プラットフォームを活用し、定評のある高度なデータ分析についてもコンサルティングいただいております。

ホンダモーターサイクルジャパンは、今まで車両販売を中心に事業を展開してきましたが、昨今の消費傾向が“モノ”から“コト”へと変化を遂げていることを受け、「コト」を提供することで私たちの付加価値を見出そう試行錯誤してきました。その中で誕生したのがHonda FLEET MANAGEMENTです。私たちは車両の提供に留まらず、今後もその周辺にある環境−―安全運転や業務の効率化に関する提案も積極的に行っていこうと考えております。

最近は、モビリティと人をシームレスにつなぐ、MaaSやCASEといった次世代サービスについて、各社しのぎを削っておられます。Honda FLEET MANAGEMENTサービスは、来たるコネクテッド時代への第一歩としてリリースしたものです。Honda FLEET MANAGEMENTは具体的にどのように活用できるのか、搭載機能について簡単にご紹介させていただきます。

リアルタイム位置情報

こちらは、サービス開始後にご利用いただける管理画面の一部です。利用いただいている二輪車の位置情報が地図上でわかりやすく表示され、走行中なのか、停車中なのか、各々の状況を把握することができます。

運転特性レポート

GPSによって取得した位置情報を含む走行データは、クラウド上に蓄積されます。これらのデータをもとに、運転者の急加速や急減速の回数の他、そのイベントの場所を表示させる事が可能です。個々のドライバーの運転特性を分かりやすいレポートで提供できますので、安全運転教育にもご活用いただけます。

自動日報作成

車両に搭載する通信デバイスでは、車両本体の電源のON・OFFとGPSデータと融合させ、訪問先での滞在時間を把握することができます。そして、その日、1日の訪問先、走行距離、滞在時間を自動で記録し、データ出力ボタンで日報データを簡単に出力できるのが、この自動日報作成機能。これらの情報はインターネットブラウジング時であれば地図で表示することも可能ですので、管理者は1日の走行ルートを直感的に捉えやすくなります。

ジオフェンス機能

地点登録をした箇所、設定範囲内に車両が入ると担当者へメールでお知らせする機能です。車両の到着予定時刻がわかれば、次の業務アクションを事前に準備しやすくなりますし、お客様からの問い合わせにも早急な回答ができます。

Honda FLEET MANAGEMENTは、上記の車両に加え、電動二輪車のベンリィe;にも適用可能です。

サービスをご利用いただく際は、専用の車載器を二輪車に取り付けますので、スマートフォンを介したテレマサービスで散見される、電源の入れ忘れや充電切れなどで発生する「データが取得できない」という問題は起こりえません。車体カバーの内側に通信デバイスを装着しますから、盗難の心配も不要ですし、電源もイグニッションのON・OFFに連動していますので、確実なデータ取得が可能です。

すでにご利用されている二輪車へ後付けで設置することもできますが、専用のコネクタを用いる関係で、他メーカーなど、適用不可能な車両も一部ございます。恐れ入りますが、詳細は弊社へお尋ねください。車載器の取り付けには、ホンダ二輪正規取扱店に在籍する整備士の技術が必要となりますので、全国で弊社とお取引させて頂いている約5,000店の二輪販売店の中からご紹介させていただきます。

Honda FLEET MANAGEMENTで実感していただける3つのメリット

二輪のビジネス車両を活用した業態は多岐にわたりますし、その使用方法も幅広く、車両の数だけ課題があります。たとえば、同じ配達系の業界でも毎日同じルートを回る新聞配達と、都度訪問先が変わる食品デリバリーでは走行方法も異なりますし、見慣れない土地へ訪れる際の「危険リスクの大小」も変化します。

ホンダ車を利用されるすべてのお客様に「安全に永くそして適正に使用して頂きたい」という強い思いから、Honda FLEET MANAGEMENTは、「安全、効率、管理」、3つの悩みを解決へ導くサービスとしてご提供しています。日々、業務で行われる二輪の移動について、その内容や状況をしっかりと把握し、企業様が持つ一つひとつのお悩み解決をサポートする。それが私たちの役目です。

「安全」

「事故を減らしたい」「危険運転をしている運転者に適切なフィードバックをしたい」「管理者へ走行毎に危険運転を検知して通知したい」「運転者へ安全運転の啓発をしたい」など、お客様からの声はほとんどが困りごとです。二輪車の事故は、絶対に避けたい項目の一つですが、これは、私たちがどんなに安全性能の高い車両を提供させていただいても、企業の管理者様がどんなに強く安全運転を啓蒙していただいいても、最終的にはハンドルを握るドライバーにすべて委ねられるものです。

余談ですが、運転をする際は、必ず免許証を携行しなければなりませんよね。普段から何気なく使っている「免許」という言葉ですが、「許し免れる」と書きますよね。実は日本の法律では車やバイクを運転する事を禁止しており、免許証はこの禁止事項を「許し免れる事が出来る証」として発行されているのです。つまり、モビリティとは便利であるものの、それだけ危険なツールでもあり、扱う人間がその特性を正しく理解する必要があるのです。

さて、先ほどのお悩みに対して、運転状況を可視化し、改善につなげ、適切な安全運転教育につなげるのが、Honda FLEET MANAGEMENTの「運転特性レポート」と「急加減速個所の表示」です。直接的な効果として、次のような効果を得ることができます。

  • 運転者の運転のクセや危険運転回数を定量化でき、指導改善することができる。
  • 急加減速の多い場所を可視化でき、潜在危険個所を周知できる。
  • 運転者の安全運転意識が高まり、事故の抑制になる。

また、間接的には、安全運転が周知されれば車両にかかる負担も軽減し、燃費や消耗品交換、整備費や修理費といったランニングコストを削減できたり、事故による 稼働車両数 減少などの損害を防いだり安全運転励行による企業イメージが向上できるといった効果もあります。

ランニングコストについては30%向上したという実績もあるほどです。

「効率」

効率という観点では「今どこ走行しているのか知りたい」「あと、どれくらいで戻ってくるのだろう」「保有車両が少なく稼働率が上がらない」「普段から、どんなルートを走行しているのだろうか」という困りごとが多く上がります。

効率を上げるには、リアルタイムの車両位置情報を把握し、次のアクションへ素早くつなげる事が重要です。走行ルートの可視化によって、ルートも最適化できます。リアルタイム位置情報やジオフェンス機能、走行履歴 ルート記録によってえられる直接的効果は、次の通りです。

  • リアルタイムの車両位置が把握できる。
  • 登録地点周辺に車両が近づいたことを通知する事で車両帰着の予想が可能。
  • ルート可視化や見直しにより効率の良いルート走行が可能。

間接的には、急なアポイントやお客様のニーズに細かに対応することができるため、CSの向上が見込まれます。小さな効率化の積み重ねは、収益の増加を促進します。

「管理」

今はより精度が高く、適切な管理が求められる時代です。とはいえ、乗務記録の入力もそれなりに工数かかる業務ですし、管理者は労務管理の観点で走行時間の管理も重視しなければなりません。

管理においては、「手書きの常務記録の入力を楽にしたい」「長時間走行や業務量を可視化したい」という困りごとが多いようです。Honda FLEET MANAGEMENTの自動日報作成機能を利用すれば、今まで自己申告で作成していたところ、より詳細かつ精度の高い日報を作成するができるため、管理者は従業員の細かな労務管理を行うことができますし、従業員にとっては今まで記入にかかっていた時間を大幅に短縮できるため、工数削減、従業員満足度(ES)の向上も見込むことができます。

基本機能だけでも、このように幅広い悩み・困りごとの解決ができますし、データ分析やレポーティングのご提案、その他安全運転講習のご紹介など、お客様それぞれの要望に沿ったご提案も可能です。

電動二輪車におけるHonda FLEET MANAGEMENTの活用

Honda FLEET MANAGEMENTは、ホンダ二輪車にテレマティクスコントロールユニット(TCU)を取り付けて、GPS信号をもとに車両の走行情報をサーバーに蓄積します。この蓄積されたデータを利用して、ホンダ二輪車をご使用いただいている企業さまの安全、効率、管理に関する悩みや困りごとを解決に導きます。


TCUは車両制御データの一部、そして積算走行距離や速度に加えて、ホンダモバイルパワーパックに関する電力情報も取得可能です。これにより、充電量や電気使用量が可視化できるため、高度なデータ分析が行え、運転環境と電費の関係性を理解し、改善することができるのです。

ホンダモーターサイクルジャパンの展望

私たちホンダは、カーボンフリー社会の実現をリードするために、環境に配慮した電動二輪車の販売だけに留まらず、Honda FLEET MANAGEMENTを通じて、ホンダの二輪車をご使用される企業さまのSDGsの取り組みをサポートし、ホンダが提案する「モノ」と「コト」のトータルサービスで、環境負荷低減の取組みや社会づくりへ寄与したいと考えております。