インタビュイー:
株式会社ソミックマネージメントホールディングス
https://www.somic-group.co.jp/
取締役 経営企画・経営推進担当 石川 彰吾さま
グローバル経営推進部 経営企画推進室 鈴木 治さま
未来を妄想し挑戦する=MOSOMIC
まずは御社の事業紹介からお願いします。
鈴木:社名は社員から公募した造語で「創造(SOZO)・未来(MIRAI)・挑戦(CHOSEN)」の頭文字を取ってソミック(SOMIC)と名付けられています。グループ会社を統括するソミックマネージメントホールディングスの傘下に5事業会社があります。
1916年創業で一番歴史が長く、主に自動車の足回り部品(ボールジョイント)の開発・製造・販売を行うソミック石川、主に自動車のシート部品(ダンパー)の開発・製造・販売を行うソミックアドバンス、主に織機部品の製造・販売を行うアスキー、グループの軽作業や事業受託をするソミックエンジニアリング、2021年11月設立のソミックトランスフォーメーションの5社です。
国内拠点は、静岡県西部地域(浜松市、磐田市)を中心に6工場を構え、海外は計6カ国10工場を構えております。
石川:長年に渡って企業として成長してきたものの、自動車業界に100年に一度の大変革が訪れており、やはりこのままでは一定の陰りが見えてくるという危機感がありました。そこで、2018年にソミックマネージメントホールディングスを設立し、その下に事業会社を置くコーポレート制にして、変革を進めやすい体制を整えてきました。さらに2021年にも組織再編を行うなど、「変革をしなければこの先、生き残っていけない」と危機感を持つとともに、外部環境の変化をチャンスと捉え変革を進めています。
変革を進めていく中で新しいプロジェクトを発足されたとお伺いしました。
鈴木:はい。プロジェクトの概要から説明させていただきます。先ほどソミックが「創造・未来・挑戦」の造語と説明しましたが、妄想(MOSO)+ソミック(SOMIC)→「MOSOMIC(未来を妄想して挑戦する)」と名付けたプロジェクトを現在進めています。
温暖化や少子高齢化といった外部環境の変化、自動車業界をみると、CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)や異業種や新興メーカーの参入など、多くの変化がある中で、従来の考え方・やり方では対応できなくなる可能性があるという危機感のもと、今までの枠にとらわれないDX人財の育成を目指してスタートしました。
今回はこのプロジェクトの中で、モビリティデータを手掛けるスマートドライブさんをパートナーとして選ばせていただき、「スマートドライブさんのデバイスから取れる移動データを活用して妄想する」というテーマを置いて活動しています。
プロジェクトは具体的にどのように進めているのでしょうか?
鈴木:DXを知ることや楽しく面白いことを妄想することから始めていて、「知る→分かる→できる」のステップで進めています。
公募で集まった、中堅・若手社員が中心の計20名のメンバーを5チームに分け、2021年7月から2022年の3月まで計18回のスケジュールで進めています。現在も社内でトライ&エラーを行っている最中ですが、具体的には、カーボンニュートラルを目指したことや、浜松市は政令指定都市の中で一番人身交通事故が多いという背景から交通安全を目指した「妄想」がメンバーから出てきています。
事業との関連性は考慮せず、まずは妄想ベースでやっていらっしゃるということですね。
石川:はい。良い意味で制約条件を可能な限り外しているというのが一つのポイントです。既存の事業にとらわれてしまうと、既存の改善的な発想でしか物事が生まれてこなくなります。ただ、今回私どもがやりたいことは本当の意味での変革やイノベーションを社内で起こすことです。そういう意味で、制約条件を外しました。また、各チーム一つのアイテムに絞ってしまうと幅が狭まりますので、各チーム二つアイデアを作っても良いことにしています。
例えば、一つの妄想は社会変革・社会課題に取り組むこと。もう一つは、車のデータを可視化させることで、業務の効率化に活用できないかを検討すること、など二つの観点で妄想をしています。
メンバーから出た「視野の広がり」と「従来業務への横展開、好影響」
プロジェクトを開始して、感触はいかがでしょうか?
石川:率直に、やってよかったと思っています。先ほど鈴木が説明したように、DXを「知る・分かる・できる」というプロセスを踏まないことには、変革は始まりません。そういう意味では今回、色々なDXに対しての知見があるスマートドライブの皆さんにご支援頂き、「知る」「分かる」というところをスムーズに進めることが出来ました。実際に、既に世に提供されているスマートドライブさんのサービスを活用することで、「これがDXなんだ」ということを肌で感じることが出来ました。
その上で、今は「こんなことも出来るのではないか?」と妄想しており、これから形にしていくところです。このプロジェクトが無ければ、そうはならなかったと思っています。
鈴木:メンバーからは、プロジェクトに関して以下のように「視野の広がりにつながった」と「従来業務への横展開、好影響がある」という意見が出ています。
プロジェクトメンバーからの声:
- 今まではニュースの中で「自動車、足回り、乗り心地、安全性」に目が留まっていたが、モビリティに限らず、社会課題全般が目に留まるようになり、課題解決に何ができるかと妄想するようになった。
- カーボンニュートラルやSDGsについて、知っていても何をすべきか・できるか考えたことがなかったが、具体的に自分のできることを考えるようになった。
- 今までやって当たり前と思っていた業務に対して、提供頂いた「ありたい姿・現状・課題」のフレームワークをもとに、「なぜやるのか」「目的は何か」を強く意識するようになった。
リーダーができる唯一のこと
石川様は担当役員として結果も求められるお立場かと思います。その点をどのようにお考えですか?
石川:こういった活動は「PLのトップラインにすぐに効くのか?」など、短期的な議論になりがちですが、実際にはなかなかそうならないのが実態です。そういった理由から、一歩踏み出せない会社様が多いのではないかと思っていますし、自社の過去を振り返ってもそう感じます。このプロジェクトは楽しく・面白くというのを前面に出しているのですが、重要なのは、経営者やリーダーたちが「まず一度短期的な議論は横に置いてでも、やるんだ」というリーダーシップを見せることではないでしょうか。それがメンバーへの安心感にもつながるでしょうし、強いて言うなら、それこそがリーダーができる唯一のことだと思っています。
PLにこだわらないことで、プロジェクト参加へのハードルを下げ、かつスピーディーに動けていると。
石川:私の勝手なイメージですが、子どもの頃はルールを変えることや、自分でルールを作ることを当たり前にやっていましたよね。生きていく過程の中で、色々な社会のルールや秩序を学び、自分のできる領域を自ら狭くしてきたのではないかと。幼稚園や保育園の砂場遊びのときは、参加するハードルも、ルールを変えるハードルも低かったでしょう?一度そこに立ち返って、砂場遊びのような環境を、改めて会社の中で作れると良いなと思っているのです。
また、プロジェクトリーダーを鈴木に依頼した時、鈴木からは「DXに長けていない自分でいいのでしょうか?」という相談を受けました。しかし、DXに長けていないからこそメンバーの気持ちがわかるはずだと。結果、チームへ積極的に関わりを持ちながら、困っているところを吸い上げ、いろいろと問題解決してくれていると感じています。
鈴木:DXに長けていない自分がリーダーをやる意味は、先陣を切って失敗することではないかと感じています。「知らなくても挑戦して良い」という雰囲気を私自身が実践して進めていくことで、周りを巻き込むことが出来るのではないかと考えています。
もちろん、当初は不安でいっぱいでした。「今までの枠にとらわれない」というプロジェクト自体が初めてで、メンバーの公募からすべて手探り状態でのスタートでしたから。全18回の年間スケジュールを立てて実施してきましたが、どんな企画が良いかすら最初は分かりませんでした。そんな中、企画決定のための事前打ち合わせをスマートドライブさんに相談させてもらいながら進められたのは心強かったです。打ち合わせ時に、事例などを用いてリスク回避などのアドバイスをいただけたので、安心感を持って企画を決定し、メンバーに発信することができました。
プロジェクトを進めていく上で工夫した点などを教えて頂けますか?
鈴木:挑戦や妄想を進めるための基本ルールを設定したことですね。弊社では以下のようなものを意識して進めてきました。
ワークショップの冒頭にアイスブレイクを実施
全メンバーは、ワークショップの前まで業務をしているため、いい意味でアイスブレイクによって一度業務から離れることでマインドセットし、楽しみながら妄想するための工夫です。
小さな挑戦・小さな成功体験を推奨
中堅・若手社員が中心ということもあり、ファシリテーション、気軽に何でも意見が言えるディスカッション、プレゼンなど、従来の業務では経験してこなかったことへの挑戦を推奨し、 ”まずやってみる”ことを根付かせる目的があります。
MicrosoftのTeamsで情報共有を行い、互いに学び、刺激を得る
学んだことや気づきをミーティング後にTeamsに投稿し共有することで、他メンバーからの刺激を得て切磋琢磨しています。
最後に今後の方針などをお聞かせください。
鈴木:2021年の12月からは積極的に、かつ目的意識を持って走行データを取る作業に移っています。それを最終的な「できる」というステップに持っていけるように、今前進していますし、成果を期待しています。
石川:やはり最終的には経営視点でも見なければいけないと思っていますが、ひとまずはスタートを切ることができました。今後はプロジェクトを通していくつかの提案を出し、いくつかは次年度予算を付けることや、組織化させて実際に形にしていくところまでリードするのが私や鈴木の役割だと思っています。また、これを一年で終わらせるのではなく、来年度もこういったプロジェクトを回しながら続けることが、弊社の大きな成長に寄与していくと考えています。
今後の貴社の事業展開がとても楽しみです!大変貴重なお話をありがとうございました。