モビリティデータとは?
スマートドライブの弘中と申します。
私からはモビリティデータの価値と解決できる課題というテーマでお話をさせていただきます。
「モビリティデータ」とは、大きく二つのデータから構成されています。
動態データ
加速度、重力の向きや大きさ、位置情報である緯度経度など。この車両の動態データを使うことによって、急加速・急減速・急ハンドリングといった運転の特徴を抽出することができるようになります。
走行データ
いつ車を運転していて、エンジンを入れてから切るまでどのルートを通っているのか、走行時間、走行距離など。
スマートドライブでは車両の”動態データ”と”走行データ”を利活用しています。
このモビリティデータには次のような3つの特徴があります。
1.誰にでも分かるシンプルなデータ
我々が取得しているデータのアウトプット画面を見ていただければ分かる通り、走行が開始してからのルートや、アイドリング時間、いつ・どこで急操作をしている…こういった情報が、地図情報とセットで確認できるようになります。
「この場所で急加速している」という情報が一目で理解できますし、どのくらい走行しているのかといった情報も、視覚的に非常にわかりやすく取れるという特徴があります。
2.視点を変えることで多くのことがわかる
走行データは、”安全運転”のために使用される例がほとんどです。しかし実は、安全運転という項目はこのモビリティデータで分かることのほんの一端にすぎません。
例えばですが、モビリティデータを活用することで、企業の「売上の増加」「コストの削減」「CSR推進」という大きく3つカテゴリーに寄与することができます。
売上を増加させるためには、受注件数と案件単価を上げるというのが鉄則となりますが、この受注件数に影響する営業の活動量は、移動データから導き出しすことが可能です。コスト削減という観点では、モノ自体や時間を減らすことが可能になりますし、CSR推進については、エコドライブによるCO2の排出削減や、燃費効率…こういったテーマでモビリティデータの活用が可能です。
3.他のデータと掛け合わせることで更なる価値が出る
例として、移動情報に、売上情報、業務内容、日報の情報などを掛け合わせることで、営業量や質の向上、営業支援などの展開が可能です。どのドライバーがどの業務にどのくらい時間を使っているかという点や、各ドライバーや営業担当者ごとの商談時間、訪問回数のランキングデータを出すなどの活用ができます。
今回のセミナーではこちらについては触れませんが、スマートドライブのWebサイトには参考となる資料が多く掲載されており、ダウンロード可能ですのでぜひご確認ください。
各種ダウンロード資料はこちら
業務効率化を進めるためのフレーム「ECRS」
今回のセミナーは「業務効率化」が大きなテーマですが、これはモビリティデータの活用で実現できる「コスト削減」の中で「人の時間の削減」という領域にあたるかと思います。私からは、これから業務効率化をどう進めていくのかという点について、お話させて頂きます。
業務効率化を進める前に、そもそも業務効率が何を指しているかという部分についてですが、こちらに労働生産性に関する公式を記載しました。
労働生産性を上げるためには、労働投入量(従業員数や時間当たり労働量)を減らしていきながら、労働成果(労働による付加価値)、つまり分かりやすく言うと売上や勤務時間内の成果を上げていく必要があります。
業務効率化とは、分母にあたる労働投入量を下げていくということです。つまり、同じ成果を出すのにかける時間や人を下げていくこと。それが、一般的に業務効率化と言われている部分です。
業務効率化を進めるためには様々なフレームがあるのですが、本日は「ECRS」いうフレームをご紹介します。これはそれぞれの頭文字をとっています。
このECRSの法則ですが、上から順番に検討を進めるべきだと言われています。理由は改善インパクトが上の方が大きいからです。インパクトが大きいところから順番に処理をしていくと、業務的な効果や経営に対する影響も大きく、改善としては進みやすいと言われています。
このECRSの法則に則ってモビリティデータをどう活用していくかですが、ここでは①走行時間、②走行ルート、③滞在場所という観点で見ていきます。ここでは特に効果の大きい「E:排除」「C:結合」について考えます。
「E:排除」
①:走行時間
走行時間を分析することによって、保有車両数や移動時間の削減などが可能になります。保有車両の削減という点では、一日の中で車両が稼働していてる時間を確認し、走行時間のバラつきを可視化します。繁閑期の稼働率差が埋まらない場合は、第二部でもご説明させていただくモビリティミックスという考え方で、保有車両を減らして他の代替手段を使い、削減していくという考え方が可能になります。
他にも、地図情報にお客様の住所や配送先の住所をセットすると、そこに何回訪問しているかデータとして上がってきます。そのうち数回をweb会議に変更した場合のインパクトなども、走行時間の分析によって取得することができます。
②:走行ルート
走行ルートの分析によって、そもそも拠点を削減することができないかや、最適な商圏エリアを設定できないかを明らかにします。メイン商圏外の飛び地へ訪問しているルートを可視化することで、飛び地を別拠点の担当者へ振り替えたり、そもそもこのお客様とのビジネスがそこまで大きくないものであれば、削減することで1か月あたりの全体の訪問件数が増えるかもしれない、といったシュミレーションをしていきます。
③:滞在場所
滞在場所からは、見込み顧客の縮小や利益率の低い商品の縮小検討などが可能になります。例えば売上のデータと訪問回数のデータを組み合わせていただくと、訪問回数と売上の関係値を見ることができ、生産性が高い企業様とそうではない企業様を可視化することができます。ですが当然、お客様に関する情報はさらに他のデータと掛け合わせなければ正しいインプットはできません。そのため多くの場合は、売上データと訪問回数のほかに、お客様の見込みランクのようなものを掛け合わせ、ポテンシャルがあるお客様に対して訪問ができていているのか、といった分析を行っていきます。
「C:結合」
①:走行時間
ここでは、拠点間での共用車両化ができないかというのが考えられます。拠点間で車両を共用していく際には、各拠点ごとの車両の利用データを見ていきながら、それぞれの空白の時間や曜日を組み合わせることによって、複数拠点で共有化が可能になります。また「会社ー個人」間の共用を検討する場合も、会社で利用する時間と個人で利用する時間を分析することで可能になります。
②:走行ルート
拠点の統合やルート最適化が分析によって分かるようになります。
車両を止めた場所からの最寄拠点が、所属する拠点か異なる拠点かを可視化することで、拠点の統合可能性を考えていきます。統合することによって、商談活動以外の時間を大幅に削減できる可能性を分析します。
また「会社ー個人」間の共用というところでは、SmartDriveのデバイスはシガーソケットに挿すだけで運用できるため、マイカーやカーシェアのデータも簡単に収集することができ、プライベート利用の際には何台の車が必要かという情報を推定できます。
③:滞在場所
共同配送や立ち寄り営業の促進など、滞在時間の分析結果によって可能になります。例えば、30分以上滞在したお客様の訪問回数をリスト化します。さらにこのデータをドリルダウンし、それぞれのお客様の地点から半径500メートル以内に入っている訪問先リストを抽出します。訪問先リストが多いお客様の場合、もしかすると商談時間を20分に短縮することで、近隣でこれまで立ち寄りが少なかった訪問先を訪ねる時間ができるかもしれない、といったことが検討可能です。
第一部まとめ
モビリティデータというのは、車両の動態データと走行データの組み合わせになっており、3つの特徴があります。それは、①誰にでも分かるシンプルなデータ②視点を変えることで、安全運転の推進以外にも生産性向上、コストの削減、CSRの推進などに活用できるデータ③他のデータと掛け合わせることでより価値がわかるデータ という点です。
そして、労働生産性の考え方について。労働生産性というのは、労働投入量を減らしていきながら、労働成果を上げていくということで向上します。このうちの業務効率化というのは、労働投入量をいかに減らしていくかという観点で進めていくと効率がよく、その際のフレームはECRSといって、「E:排除」「C:結合」「R:再配置」「S:単純化」をしていくことによって、業務効率化を進められる優先順位をつけることができます。
本日はECRSを行う際に一番効果が大きい「E:排除」「C:結合」というところでお話させていただきました。改善効果の大きいところで検討を進めなければ、コストインパクトという観点では大きな成果というのは期待できない可能性が高い。やはり上から順番に解決していくということが鉄則だと思っています。
以上が私が本セミナーでお伝えした内容となります。
第二部では、実際に車両に関わる業務効率化の領域の詳細に関して、事例を交えてご紹介させていただきます。ご静聴ありがとうございました。