インタビューイー 長濱成徳(ながはま しげのり) 高機能プラスチックカンパニー フォーム事業部 フォーム営業所 所長
まずは簡単に長濱様のご経歴について教えていただけますか?
長濱成徳(ながはま しげのり)と申します。前職でも材料メーカーで営業と製品企画をしておりまして、2019年の6月に積水化学工業に入社し、現在は自動車メーカーに発泡体を販売していくチームのリーダーをしています。
発泡体というのはどういったものなのでしょうか?
発泡体というのは簡単にいうとスポンジのことです。身近なところでいうと座椅子の中に入っているスポンジや、携帯電話のレンズマウントや額縁等でも使われています。
我々のチームがメインで担当している自動車業界では、ダッシュボードのインパネ(インストルメント パネル)周りや革張りの裏側で使われてします。革だけですと触った時に高級感がでないので、裏側に発泡体を入れて柔らかさと弾力を持たせて高級感を出しています。
(左側が光を通しやすい発泡剤、右側が従来品)
また、最近は光を通しやすい発泡体の開発に力を入れております。こちらですが、一番下に光源がありまして、その上にクッション性を出すための発泡体を置いております。通常の発泡体でも、ある程度は光を通すようにはなっているのですが、黄色味がかかってクリアにならないのです。光を通しやすい発泡体をMobility Transformationのブースでも展示させていただいたのですが、こちらを使うとクリアに光を通すことができます。 この素材を使って将来的には、車内で使われている合成革にも文字や映像がクッキリと表示されるようにしたいと思っています。例えばカーナビやタブレット型のディスプレイを車に剥き出し設置するのではなく、車の内装に組み込まれた形にしておいて必要な時だけディスプレイを映し出すことができるようにしたいと考えています。
他にも、耳の不自由方が運転をされている時にクラクションを鳴らされていることに気がつかない、という問題があるのですが、クラクションを鳴らされたらインパネが赤く点滅して情報をお伝えすることもできると思います。スピードメーターなどのダッシュボード以外の部分でもメッセージが伝えられるようになることで、運転の体験をよりよいものにしたいのです。この技術をさらに磨きをかけることで、車の内装デザインを根底からガラっと変えることができます。
なるほど。普段車に乗っていても発泡体を意識することはないですが隠れた所で使われているのですね。他にも積水化学工業と自動車との関わりを教えていただけますか?
会社としては、自動車メーカー様とは結構前からお付き合いをさせていただいてます。自動車のフロントガラスというのは2枚のガラスをはり合わせているのですが、そのガラスとガラスの間に中間膜という、とても薄く、非常に透明なフィルムが入っています。この中間膜があることによって、事故が発生した時にガラスが飛び散らないようにしたり、物が飛んできてガラスにぶつかった際に、室内に物が入ってこないようにしたりしています。 1970年前後からフロントガラスの中間膜を卸しはじめて、現在は世界一のシェアを持っていて、ほぼ全ての自動車メーカーでご利用いただいております。
発泡体も中間膜もそうですが、車をご利用されているドライバーの方が気がつかないような所で弊社製品が使われています。他にも地味ではありますが、車で使用されているカーペットを固定する両面テープや、カーナビの筐体と鏡(ガラス)を固定するための両面テープなどでも弊社は関わりを持たせていただいております。
自動車だけではなく、広い範囲でモビリティとの関わりがあるとも伺ったのですが。
自動車だけでなく、鉄道でも弊社の製品をご利用いただいております。鉄道の空調ダクトで使用される断熱材は世界中で利用されていますし、少し変わっていますが、線路の枕木でも利用されています。
枕木って、読んで字のごとく「木」ですよね?
弊社の枕木は木ではなく樹脂で作っていまして、この枕木はドイツの線路でも利用されています。他にもグローバルでトップスリーに入る航空機のダクトメーカーの買収手続きが2019年11月に完了いたしました。自動車・鉄道だけでなく航空機産業にも本格的に参入していきます。
自動車産業では100年の1度の変化が起きると言われていますが、御社は今後どのように変革の波に向き合っていくのでしょうか?
現在、自動車メーカー様でご利用いただいてる材料につきましては、当面の間は引き続きご利用いただけると思っています。中間膜についても継続してご利用いただけると思いますが、自動車の技術が進化していくと事故が起きた際の飛散防止だけでなく、ガラスで様々な情報を表示していくことが求められてくると思っています。プロジェクターのように表示物を直接ガラスに映すのではなく、スマートフォンの液晶のようにガラスの中で文字や映像を浮かびあがらせるような、今までに無い機能が求められれてくるかと。5Gもそうですね、電波を使って自動運転がどんどん実現していくと思うのですが、電波の障害を防ぐためのシールド材を発泡体やフィルムで作っていく必要もあると思っています。
さらにいうと、完全自動運転が実現すると車内がリビングのような空間になっていくでしょうし、自動車産業が大きく変わろうとしている今、どうやって快適な空間を我々の材料を用いて実現していくのか、どのような材料が今後必要になってくるのか、こういった事を日々考えて様々な方法で情報を集めているところです。
今後、スマートドライブ とのコラボレーションや今後一緒に取り組めそうなことはございますか?
今回Mobility Transformationのカンファレンスに参加させていただいて驚いたのが、SmartDrive様は色々なな業界とのコネクトションやネットワークが多岐に渡る事です。我々の材料の販売先になる方という意味ではなく、未来志向でモビリティを捉えている情報をお持ちの方々と沢山お会いさせていただきました。
普段がなかなか会うことができない方々で、我々の実ビジネスからちょっと距離のある方とも今後はコラボレーションをしていきたいと思っていますので、今回のカンファンレスのように、様々な方とマッチングいただけるような場づくりを今後もしていただけると非常にありがたいです。
今後の展開についてお伺いできますか?
積水化学工業全体としても自動車業界の今後の行方や、進化の方向性には非常に敏感になっています。様々なニーズに対応できるように材料開発を積極的に行なっていますので、ぜひこういう材料が欲しい、といった要望やお困りごとがあれば、お気軽にお問い合わせいただければ、フットワーク軽く対応させていただきます。
この度は貴重なお話、ありがとうございました。
ありがとうございました!