駐車場シェアサービスの登場
様々な分野で増えている個人間のマッチングサービス
冒頭でも少し触れたように、アメリカで有名な「Airbnb」というサービスは寝泊まりしたい場所を探しているゲスト側と、空いている物件があるので貸したいと願うホスト側を繋ぐ役割を担っています。
特に都心部などで使用していない部屋があるのは非常にもったいないため、これを有効活用できないものかと考えている家主がAirbnbを通してスペースを貸し出し、利益を生み出しています。個人で貸し出す物件なので宿泊料はホテルなどと比べると安くなるケースも多く、少しでも旅費を浮かせたいと思う方に活用され注目を集めています。
他にも配車サービスである「Uber」というサイトも存在し、こちらはタクシーのように一般の方の運転で送り迎えしてくれるという面白いサービスです。アプリ上から簡単に配車ができ利便性に優れており、相乗り機能(uberPOOL)なども合わせれば料金もかなり抑えられるため、アメリカなどではかなり活用されている様子です。
駐車場×マッチング
駐車場のシェアサービスとはこれらのサービスのモデルを駐車場に適用した形だと思っていただけるとわかりやすいと思います。
例えば今まで2台所持していたクルマの1台を売ってしまったので、使っていない空きの駐車場がある人などは、このシェアサービスを通して近くをクルマで訪れた人に貸し出すというビジネスを行うことができます。
特にクルマがなければ死活問題となるアメリカにとって駐車スペースの確保は課題の一つです。
Airbnbのように気軽に個人の駐車スペースを他のゲストに貸し出すことで、ネット予約により駐車場を探す手間も省け、付近の主要パーキングエリアよりも価格設定を抑えることに成功しています。海外の駐車場シェアサービスには「Parking Panda」や「SpotHero」などがあり、これらのサイトは専用のスマホアプリなども開発してユーザーの利便性を高めています。
アメリカのシカゴの主要都市周辺でのコインパーキングの料金を調べてみましたが、平均で1時間6.5ドル前後ほどの価格設定です。一方で駐車場シェアサービスの価格を調べてみると、1日で18ドルや3時間で8ドルなど格安の値段で駐車するエリアを見つけることができます。こちらは個人の言い値で駐車料金が決まるため、時間や曜日によって変動は起こりますが、それでも付近の専用駐車場よりも格段に安い値段で駐車できるようです。
日本では似たようなサービスとして「akkipa」や「軒先パーキング」などがあります。海外の駐車場シェアサービスと同じく、スマホアプリなどと連携して手軽に駐車スペースを検索・確保することができるサービスです。
駐車場シェアサービスの特徴と懸念事項
コインパーキングなどは平均で10分100円ほどの値段が相場ですが、駐車場シェアサービスを利用すると、都心部でも15分90円ほどで駐車することも可能で、場所によっては1日1,000円以下のものまで存在します。またコインパーキングは、有名な飲食店やスタジアム付近で満車になっていることも多いため、ユーザー側にとっては不便に感じることがあるでしょう。一方で、駐車場のシェアサービスはネットで事前に予約できるため、確実に駐車できるのが大きなメリットとなっています。
Aribnbのような個人宅を貸し出す場合は何かとトラブルも起きやすいですが、駐車場は一部の土地だけ利用すれば良いため、今後は日本でも個人経営者が増えるかもしれません。
懸念事項としてakkipaのサイトなどを調べると「会員制のため駐車場法には適用されない」とコメントされていますが、いずれは何らかの法整備が行われる可能性も考えられます。まだ国内で始まったばかりのサービスのため、法律的な観点からの指摘は現在のところ受けていないようですが、日本はクルマに関する規制が厳しいので、これらのサイトを活用するホスト側の方は常に勉強が必要かもしれません。
駐車場を管理する現在のテクノロジー
個人で駐車場を貸し出す場合、マナーが良いお客さんは時刻通りに活用してくれるかもしれませんが、時にはそうでない人もいるかもしれません。しかし駐車場のそばでいつも監視している訳にはいかないため、駐車場にセンサーやカメラを取り付け、スマホと連携して管理する方法もあるようです。いわゆる駐車場のIoT(モノのインターネット)化です。
個人でスペースを貸し出す場合もそうですが、それ以上に専用駐車場を運営している経営者にとって駐車場のIoT化は役に立ちます。
国内では「eCoPA」という駐車場検索管理システムを販売するIoTソリューションサービス企業がありますが、こちらのシステムを導入することで、駐車場の管理や決済などがオンライン上で簡単にできます。
駐車場を借りるユーザー側にとっても、ネット上で駐車場の利用料金や空き状況などを確認し、予約から決済までをワンストップでできるのは大きなメリットです。
この「ネット上でできる」ということが重要で、離れた場所から駐車場を管理することはもちろん、宣伝にも繋がる役割を果たすため、今後も駐車場のIoT化は更に加速するかもしれません。
駐車場における自動駐車システム
先にも述べた駐車場のIoT化が進むことにより、更なるサービスが生み出される可能性もあります。その一つが「全自動駐車システム」です。すでに一般的となりつつある駐車サポートシステムですが、この技術を最大限に活用し駐車場を全自動化してしまおうという取り組みがドイツの自動車メーカーであるアウディなどで行われているようです。
アウディはすでにクルマの自動運転技術を実用化する段階まで進化させており、2017年には市販化を目指しています。一般的に、自動運転技術はアメリカのテスラ社が開発する「モデルS」などの電気自動車(EV)と相性が良いとされていますが、アウディはガソリン車でこの技術を達成したため驚きの一言です。
今後はこれらのクルマに合わせた交通整備がドイツで行われる可能性があり、すでに信号機などのモニタリングにより、青信号に変化するまでの時間を通知するサービスまで存在しているとのこと。この自動運転技術を活用しアウディは全自動駐車システムの開発を目指しています。
自動運転技術には車両にセンサーが常備されているので、前を走る車両との間隔を計測することが可能です。このセンサーを活用することで駐車場内でギリギリの間隔を保ったまま駐車することが可能となり、結果として無駄な駐車スペースを削減できるという効果に繋がります。駐車場建設には莫大な費用が掛かり、土地スペースの確保にも頭を悩ませなければならないため、これらの問題が軽減されることが期待されているのです。
また駐車場に入った瞬間に、クルマが内部システムにより駐車スペースを探して、自動的にその場まで運転するという技術の開発まで行われています。いわゆる「駐車する間までドライバーが何もしなくても良い」という夢の先進技術です。アウディではこれらのシステム開発にも積極的なため、それほど遠くない未来に実現する可能性も十分に考えられるでしょう。
進化し続ける駐車技術と駐車場ビジネス
近年ではデジタル技術を活用した交通整備が行われ、主要な設備のIoT化が進められたことにより、渋滞の解消や駐車場の確保が従来よりも容易となる時代に突入しようとしています。
これらの自動運転に関係した技術革新は、ドイツだけでなくアメリカなどでも盛んに行われているため、まさに各社の開発力が試される目が離せない市場へと変化してきている状況。日本も例外ではなく、オリンピックが開催される2020年を目指して、自動運転技術を一般化する試みが行われいます。
クルマを乗る人にとっては悩みのタネである「駐車場」「駐車技術」の問題。近年ではネットを活用した駐車場ビジネスや新たな技術が次々と生み出されているため、非常に便利な時代となってきています。今後は交通施設の通信システムが強化され、更に新しいサービスが創出されるかもしれません。
特に「駐車の全自動化」を達成できれば、狭いスペースでの駐車が苦手の方や高齢者ドライバーも安心して運転を楽しむことができます。デジタル技術の恩恵により、ますます多様なサービスを活用できる時代がやってくるかもしれません。