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パンデミックと都市別の交通課題に対する4つの対応戦略

パンデミックと都市別の交通課題に対する4つの対応戦略

通勤や通学、買い物、旅行…。私たちの生活にとって移動は欠かせないものであり、目的地までスムーズに移動させてくれる手段の一つとして公共交通機関があります。とくに都心部で暮らす方は、細部に張り巡らされた電車の利用は日常茶飯事ではないでしょうか。

新型コロナのパンデミックによって、公共交通機関と人との付き合い方に変化が生まれているようです。

パンデミックによって公共交通機関はどうなった?

毎日、電車に駆け込み、詰め込まれた状態で出社する−―そんな日常も今は昔のように感じるかもしれません。コロナの感染拡大を食い止めるために、政府は2020年しきりにリモートワークと時差出勤を推進したことで、いっとき、街や駅のホームが閑散としたのも記憶に新しいところです。

コロナ以前、都心部では朝7時半〜9時の通勤時間の電車混雑率が200%に届くほどの沿線がいくつもありました。朝の満員電車は首都圏における大きな課題であり、満員電車が引き起こす遅延による経済損失は年間で3,240億円とも言われていたのです。しかし、コロナの感染拡大と共に人々がソーシャルディスタンスを取るようになり、ラッシュアワーを避ける、移動手段を変更するなど、人々の考え方や価値観が大きく変化。密集を避け、ソーシャルディスタンスを保つべく、積極的にリモートワークを活用したり、自転車や自動車の通勤をしたりするなどして、「公共交通機関を利用しない」方向へとシフトしました。

また、海外に目を向けると、イタリア国内で最も大気汚染が進んでいるミラノは、都市部の自動車利用を軽減すべく、およそ35kmぶんの道路を歩行者・自転車専用にあり当てる計画を発表。これは、昨年度のロックダウンにより交通量が30〜75%減少したことで大気汚染のレベルが低減したことに着目し、検討されたものです。自動車量と交通渋滞の緩和が世界中でCO2の排出量と交通事故が大幅に減少させたため、パンデミックを機に交通手段の見直し、未来に向けた最適な移動について検討されるようになっていますが、その際に代替手段として着目されているのが既存の交通機関の有効活用です。

つまり、来たる新モビリティ時代に向けて、公共交通機関は、ユーザーのニーズに合わせて持続可能な新たな取り組みを余儀なくされているのです。

アフターコロナの「公共交通機関」を進化させる4つのポイント

都市部の公共交通機関が進化するには、安全性、持続可能性、安定性など、重要なポイントが多数ありますが、より実現性の高く有効な戦略を、以下4つの視点からご紹介します。

デジタル化

世界保健機関(WHO)と国際公共交通機関は、直接的なやりとりによる感染リスクを抑え、サービスの効率化を進めるためにキャッシュレス化を推奨しています。ある調査によると、交通機関におけるチケット購入などの物理的な金銭のやり取りはオンライン決済と比較して3.5倍の費用を費やしているとのこと。全てをオンライン化することで効率化、犯罪によるリスクの低減が期待されています。

また、ウェブサイトやアプリで検索から予約〜決済完了までをシームレスに行い、チケット不要で移動できるシステムの構築は注力すべきアプローチです。国内ではANAとJR九州が、航空券・列車の予約〜決済をシームレスに実施できる取り組みを開始するなど、少しずつシームレスな体験を提供するサービスが広がろうとしています。公共交通機関はこのように、窓口の密を防ぎ、無駄をなくしてユーザーの利便性を高めることで、公共交通機関への回帰を実現できるでしょう。

中国の北京では、ピーク時の混雑を緩和するため、試験的に予約制を取り入れています。地下鉄の入り口が混雑するのを防ぐために、ユーザーがアプリから地下鉄利用の予約を入れ、混雑を避けてスムーズに地下鉄に乗降できるというもの。直接的な接触をなくし、このようにデジタルをうまく活用して安心かつ気軽に移動できる体験を提供することは、コロナ時代のサービスとして大事なポイントになるのではないでしょうか。

輸送の柔軟な適応

新型コロナウイルスはライフスタイル、人々の価値観など、今までの常識などを大きく塗り替えました。コロナが去った後、人々は何を求めるようになるのか、ニューノーマル時代における人々の行動を捉えるのは有効な計画を立てるために大切な視点です。目的やニーズに合わせた最適な移動体験を提供するために、柔軟性を持って既存の公共交通を活用した新たなルートや新たなサービスを開発するなど、変化に合わせたサービス展開が求められるようになるでしょう。

オーストラリア、シドニーで住民向けに提供されているHillsbus MetroConnectオンデマンドバスサービスでは、エリア内に住む人々が必要なサービスに接続しやすくするために、病院とショッピングセンターのバスストップを追加しました。その地域に暮らす人の需要を交通機関に織り込むことで潜在的な需要を引き出し、利用者をつなぎとめています。

ただ、どんなに素晴らしいサービスでも、利用者がコストに見合ったメリットを感じなければ認知も利用も広がりません。新たな運用モデルを創出するには、運用コストに加え、提供するサービスの価値をどのように伝えるか、どのようなモデルとコストであれば利用してもらえるかを念頭に置いて計画を立てるべきでしょう。

必要不可欠な労働者向けの新サービス

コロナ禍の中でも必要なサービスを必要な人へ届けるために奮闘する人たちがいました。エッセンシャルワーカーと呼ばれる人たちです。外出自粛、ロックダウンなどで町全体の動きが鈍る中においても、私たちが生活するうえで欠かせない、物流、医療、区の職員など、感染が拡大する中でも職場でいつものようにサービスを提供していました。日常生活に加え、経済を維持し続けるためにも、彼らの安全を守りながら、人々に向けて必要なサービスの提供を維持するためには今後のパンデミックに備えた調整と新たなサービスへの投資が必要です。

中国の武漢を含む多くの都市では、定期的に消毒された車両と防護服を着用したドライバーによる、医療従事者へ無料の輸送サービスを強化。また、フィリピンのマニラ、タイのバンコクでは、デマンドレスポンス型の乗り合いサービスを提供しているSWAT Mobilityとトヨタモビリティ基金が連携し、医療従事者向けに自宅と病院間を終日運行する消毒済みシャトルを提供しました。

今後どのような危機が訪れても滞りなくサービスを提供するために、公共交通機関を活かしたこのような柔軟な運用は必須となるでしょう。

衛生と安全性の強化

今回のようなパンデミック下で公共交通機関に強く求められるのは、ドライバー、労働者、乗客、すべての人の安全と安心を維持することです。

海外では、Transport Research Board(TRB:米国交通輸送調査委員会)やAmerican Public Transport Association(APTA:米国公共交通協会)、International Organization for Public Transport Authority and Operators(UITP:国際公共交通連合)などの国際協会がファクトシート、アドバイザリー、ベストプラクティスを提供しています。感染が続く現在において、人々が安心して利用できるよう、こまめな消毒をはじめとする感染防止対策の取り組みを強化しましょう。

中国の多くの都市では、公共交通機関を利用する前に体温をチェックする健康チェックポイントが置かれるようになりました。ここでもし、発熱が検知された場合、入場が拒否されるようになっています。また、韓国ではバスの入り口と出口に手指専用の消毒剤が設置されていたり、車両を消毒するために、上海では紫外線を、香港ではロボットを使用したりするなど、感染対策を徹底しています。

コロナ後の公共交通は

ソーシャルディスタンスや外出自粛などを原因に、公共交通機関の利用は減少ましたが、多くの人々が社会生活や日常生活を維持するために必要な移動手段であることは間違いありません。利用率を維持するには、ニーズに合わせた施策を柔軟かつスピード感を持って取り組むことが重要だと言えるでしょう。

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