既存事業・サービスにおけるIoT×移動データの活用を後押しする “Mobility Data Platform”

既存事業・サービスにおけるIoT×移動データの活用を後押しする “Mobility Data Platform”

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石川 信太朗
Mobility Data Scientist
株式会社スマートドライブ

本記事は2020年12月1日(火)に実施した「SORACOM×SmartDriveが実現するIoTを活用したモビリティ業界のDXセミナー」のレポート記事です。
IoTを活用して、モビリティデータをどのように取得すればよいのか?また、どのように加工し活用すればいいのでしょうか?モビリティデータサイエンティストの石川が事例を交えながら解説します。

みなさま初めまして。スマートドライブでモビリティデータサイエンティストをしている石川と申します。現在移動データの分析、パートナー様とのアライアンス推進、お客様と二人三脚で進める事業開発などを担当しております。

本日は、共催しておりますソラコム様との連携によって、弊社が新たに出来るようになったことや、弊社が主にやっていることを事例ベースでお話させて頂きたいと思います。

スマートドライブの事業について

スマートドライブは「移動の進化を後押しする」というビジョンを掲げ、主に移動にまつわるセンサーデータを収集、解析し、事業化・サービス化を行っております。創業は2013年10月で、当時から一貫して移動データの解析を軸に事業を行って参りました。

大きく3つの事業領域があり、データインプット領域、データプラットフォーム領域、データアウトプット(サービス)領域です。

データインプットの領域ではシガーソケットに挿すだけで移動データが取れるSmartDriveデバイスを開発し、さらに3rdPartyデバイスとして様々な他社様製品を弊社のプラットフォームに繋いでいます。例えばドライブレコーダー、温度センサ、タイヤの空気圧をセンシングするIoTセンサ等です。自動車メーカー様とも直接やり取りをさせて頂いており、直近ではHonda様のEVバイクから直接データを取得するといった実績がございます。

データインプット領域で集めてきた様々な移動データは、弊社のプラットフォームを介することで前処理や解析処理を行い、その上でサービス化をしております。

主に弊社のブランドで展開しているものが、法人向けクラウド車両管理サービス「SmartDrive Fleet」、BtoBtoCでドライバーのエンゲージメントを高めるサービス「SmartDrice Cars」、家族の運転見守りサービス「Smartdrive Families」です。その他にも主にEnterpriseと呼ばれるような大企業向けサービスとして「Mobility Data Analytics」という主にデータ分析に特化した形のサービス提供をさせて頂いております。

その他、弊社は様々なパートナー様と一緒に、新たなモビリティサービスを作るための事業開発を進めております。

例えばゼロからデバイスを選定してクラウドに繋ぎ、その後更にサービス化するといったところまでを考えると、あらゆる面でのコストが想定されますが、Mobility Data Platformは様々なレイヤーのデバイスを解析できるアルゴリズムに注力して設計されており、さらに「エンドユーザーからの直接的なフィードバックを得ている」「事業開発経験のあるスタッフが揃っている」「高い水準の技術的アセットを持っている」という3つの強みを持っているスマートドライブと事業開発を進めることで、より早くサービスインまで辿りつくこと、、スピード感をもった事業開発を進めていくことが可能になります。

IoTプラットフォームSORACOMとの連携で加速する移動の進化

続いて、ソラコム様との連携によって弊社サービスが今後どのように変わるのか、紹介させていただきます。

前述の通り、弊社はモビリティデータを活用してどのようなサービスが作れるか、どういった価値をユーザー様に届けられるかをずっと検討しています。そして様々なプロジェクトを進める中で、モビリティデータの取得とサービス化において、大きく3つの課題があることが分かってきました。

サービス設計に必要十分なデータを低コストで取得できるIoTデバイスの選定

新たなモビリティサービスを設計するにあたり、はじめに何のデータをどの程度取得するか考える必要があります。その際、例えば「今回のプロジェクトではGPSデータは必要だが加速度データは必要ない」という事象が発生した場合、当然ながらスペックの高いデバイスは必要ありません。あまりに高スペックなものでは、そもそものプロジェクトが成り立たない、といった問題も出てきます。ですので、本当に必要なデバイスは何かという見極めが必要なので、ここは弊社も創業当初からずっと苦労をしてきたポイントです。

必要なデータを低コストで取るということは、新しいモビリティサービスをつくっていく際の肝になります。もちろん、”CANデータも取れたほうがいい”、”GPSの取得頻度はたくさんあったほいがいい”というのはその通りなのですが、多くのデータを取ろうとすると通信コストもかかりますし、デバイスそのものも高価になります。また扱うデータ量が多くなることで、扱うインフラの運用コストも膨大になってしまうのです。

膨大なデータに対する前処理の必要性

最適なデバイス選定ができたところで、次はそのデバイスから取得した膨大なデータの処理が課題となります。弊社も創業当初から移動データを収集、取得しておりますので、膨大なレコードのデータを一気に解析したりですとか、リアルタイムに処理するとった作業を行ってきました。データを一気に解析するケイパビリティや、リアルタイムにノイズを弾いて本当に必要な通知だけを飛ばすための複雑な処理などが必要で、このあたりは弊社もかなり注力して開発を進めています。

データを意味解釈し分析するData Analystの不足

最後に、集まった膨大なデータを価値に変えるためにもっとも必要なことは、そのデータの意味をきちんと解釈し、次のアクションを取っていくためにデータの意味を理解することです。やはりここには専門的な知識が度必要でして、例えばGPSに関する専門知識、それぞれのプラットフォームで処理している各レイヤーの具体的な内容、そういったものをきちんと把握できる必要があります。その上で、エンドユーザー様の課題を解決するには、技術的な背景に加え、ビジネス的な判断もできるようなデータアナリスト人材が必要です。ここはどの会社でも人材不足としてあたる壁となっています。データが集まってもそれを価値に変えられる人材がいなければ意味がありません。

スマートドライブのアプローチ

これらの壁に対するスマートドライブのアプローチをご紹介します。1つ目の壁については、弊社もデバイスの選択肢を増やすことが長い間課題でしたので、Mobility Data Platformに、汎用的に色々なデータを扱えるデータアップロードAPIを作ることと、デバイスサプライヤーさんとの積極的なアライアンスの推進。この2点でカバーしてきました。

2つ目の壁については、今現在もMobility Data Platformへエンジニアのリソースを集中的に投下し、インフラを整えています。

3つ目の壁は、弊社もまだまだ社員数が少ないうちから、オペレーションを工夫することで、アナリストの業務が労働集約的にならないようなシステム、組織にしています。

ここまでのお話で気付いている方もいるかと思うのですが、特にデバイスの選択肢を増やすという点において、今回のソラコム様との連携にはとても価値を感じております。

先ほどお出ししたビジネスモデルの図でいいますと、3rdPartyデバイスのところにおいては、その選択肢が増えれば増えるほど弊社の事業開発の選択肢も増えていきます。それはつまり、例えばお客様がより低いコストのデバイスでエンドユーザー様にサービスを提供できたり、メリットを見出しやすくなることに繋がります。

今回ソラコム様と連携させて頂いたことで、ソラコム様のプラットフォームへデータが上げられるデバイスは、デフォルトで弊社のMobility Data Platformに連携できるようになりました。

デバイスが取得したデータをクラウドに上げるというのは、通信と通信先のクラウドをきちんと作る必要があるということです。弊社も創業当初、その2つをデバイスサプライヤー様毎に個別に作成するということをやっており、エンジニアリングリソースが逼迫してしまう状態がありました。これがソラコム様と連携することによって、ソラコム認定IoTデバイスであれば、SIMを挿して電源を入れるだけでソラコム様のプラットフォームにデータがあがり、さらにSORACOM FunkというサービスによってリアルタイムにMobility Data Platformにデータが連携されます。

つまり、新しくデイバスの選択肢を増やすときに、必要な検証の工数がすごく少なくなったということです。例えばPoCなどでモビリティデータを活用しようとなった場合、まずはソラコム様のデバイスで始めることによって、よりスピーディに対応することができます。

もちろん実際はソラコム認定IoTデバイスであっても、APNの設定やUnified Endpointというデータの繋ぎこみをする設定が必要であったりします。しかし、デバイスが取得したデータをクラウドに上げるという部分のコストを非常に低く抑えられることに変わりはなく、弊社としてはそれぞれの事業開発の案件に対して選択できるデバイスが大幅に増えた、ということになります。

初期の設定さえクリアしてしまえば、Mobility Data Platformまでタイムリーにデータがあがり、Mobility Data Platformでは弊社がこれまで取り組んできたデータの前処理やリアルタイムに反映する仕組み、データ分析のコンポーネントを一斉に使えるようになります。

ユースケース

続きまして、ソラコムさんの認定デバイスをつかって弊社が考えているユースケースをご紹介します。

観光MaaS

1つ目がGPSマルチユニットです。こちらは充電式で持ち歩きができるのと、温度湿度データが取れることが特徴です。例えば観光MaaSなどの文脈で、観光客の方に持っていただくことでどこにどれくらいの人が訪問しているのかが見えてきます。それによって各観光地の滞在時間を増やすための施策ですとか、移動手段を最適化するためにどんな補強が必要かといった分析、リアルタイムに滞在している方へのプッシュ通知によって購買単価を上げるといった施策が打てるのではないかと考えています。このようなシンプルな分析レポートを出すためには、一般的にはデバイス設計からデータ取得、前処理、解析アルゴリズムをへて分析を行うので、1年ないし2年近くかかったりするのですが、ソラコム様との連携によって、この例に挙げたダッシュボードも1か月足らずで作成することが出来ています。

配送荷物の温度管理

同じGPSマルチユニットの活用例で、配送する荷物の温度管理です。荷台に搭載している荷物1つ1つに対して、温度が閾値内だったかどうか、そのときどこを走っていたのかを可視化できます。物流系の企業様からは庫内温度を管理したいという要望を頂くことも多いのですが、弊社としても簡単に検証ができるのは有難いと思っています。

産業機器の動産管理

2つ目がMeitrackの防塵防水デバイスです。農業系機器などの長時間野外での活動があるような機器、危険物の動態を管理するのに活用できます。弊社が提供しているクラウド車両管理サービス「SmartDrive Fleet」によってフリートマネジメントができるようになるほか、機器の稼働率分析や稼働時間の可視化を行うことができます。

最後に

弊社はこういったデータインプットからサービス化するまでの事業開発に注力しています。その上で様々なデバイスからのデータを統合的に解析できるような汎用的なアルゴリズム、データアップロードAPIを持っており、ハイスピードでサービスインが可能です。新しいモビリティサービスを作りたいですとか、MaaS系分析をしたいとお考えの方がいらっしゃいましたら、一度ご相談いただけましたら幸いです。

本日はご清聴、ありがとうございました。