食品業界のいま
食品業界と一括りに言っても非常に幅が広く、新鮮な野菜や魚介類を提供してくれる農家や漁師の方々から、味の素やテーブルマークなどの大規模企業、コンビニ・スーパーなどの小売店、すかいらーくやジョイフルを始めとする外食産業まで多岐にわたります。食品業界の市場規模は非常に大きく、2011年における農林水産物・食品の流通・加工総額は、国内で生産されたものだけで9兆2,000憶円、これに輸入食品や商業マージン・流通コスト・調理サービス代などが付加され、最終消費額は76兆3,000億円もの規模に達します。
人口減少による市場規模の縮小は食品業界だけの問題ではありませんが、健康志向の強まりも手伝い、国民1人当たりの摂取カロリーが1970年当時の「2,210kcal」から2008年には「1,867kcal」にまで減少しました。この数値は今後も下降傾向になることが予想されます。
両年の消費カロリーの差を「おにぎり」で換算してみると、1人当たりの消費量が「約4個」減っていることになるため、おにぎりを1個130円と仮定しても、食品業界へのダメージも少なくないことがお分かりになるかもしれません。国民全体の胃袋が縮小した背景には、食料品自体の価格がデフレ傾向あることに加え、15~64歳の生産年齢、つまり食べ盛り世代の人口が減少し高齢化が進んでいることが要因と考えられます。
一向に歯止めが利かない、少子・高齢化による食品業界の市場縮小傾向は、今後より強まっていきますが、業界としてもこうした危惧感から販売する食品に付加価値を付与し、売上高の向上を狙う動きを強めています。たとえば、ダイエット効果が期待できるもち麦や押し麦、茶美豚・金華サバなど、独自性を打ち出したブランド農水産物も数多く誕生しています。また、特定保健用食品や栄養機能食品をはじめ、ポリフェノールによる機能性作用が注目された「ハイカカオチョコレート」や、素材・製法にこだわった「プレミアム・大人の・リッチ」などと冠された商品も、一大ブームを起こし好調な売れ行きを見せています。
しかし、食品業界では深刻な人材不足や世界的な気候変動による原材料代の高騰など、簡単に解決することができない問題を多く抱えているため、各企業が揃って抜本的な打開策を日々模索しているのです。
原料生産従事者が抱える課題
そんな食品業界は大きく「原料生産従事者」「食品加工業」「小売り・外食業」の3つのカテゴリーに分類できます。それぞれ、どのような課題にぶつかっているか、深掘りしてみていきましょう。
食品業界の根本を担う、原材料生産従事者が早急の解決を望む課題は、なんといっても「担い手・跡継ぎ不足」です。とくに農業・漁業従事者不足は深刻ですが、①収入の不安定さや、②労働時間の長さ、③重労働と作業の危険性が複雑に絡み合い、人を雇えば解決できるというものでもないようです。①については、農水産従事者も知恵を絞り生産物のブランド化や、道の駅・直売所の活用により利益率向上を図っていますが、②と③は適切な解決策が見つかっていません。
そんな中、課題を解決するために持ち上がったのが、つい最近ヒットした人気ドラマ「下町ロケット」に登場した無人トラクターです。GPSの位置情報を駆使し、人が運転をせずに作業が行えるロボトラクターは、決して未来の夢物語ではありません。実際に、農機具生産メーカーが開発を進め、2018年12月12日にイセキが販売を開始したことで、先行のクボタ・ヤンマーと並んで国内大手3社が出揃いました。
まさに、IT技術の結晶ともいえるロボトラクターですが、農林水産省が定めている「農業機械の安全確保の自動化レベル」によって、現状では使用者の監視下でしか自動走行させることができません。また、予期せぬトラブルや事故が起きたときの対処や責任の所在など、自動走行そのものにまだまだ課題が残されているほか、同スペックの従来トラクターより250万~300万円も高額であるため、爆発的に普及していくのは先の話といえるでしょう。
一方、長い間「JA・漁協」が組合員である農水産業従事者を統率し、生産から販売までを手助けしてきましたが、近年若手を中心に生産者がJAや漁協から離れて独自法人を作り、生産・販売を自らの力だけで行うケースも増えてきました。独自法人を立ち上げることにより、
- 農地・漁船を法人所有させることによる経営承継の円滑化
- 対外交渉力・信用力の強化
- 社会保険の加入による人材確保・育成
- 家計・経営の分離による経営管理能力の向上
- 高額設備・機具の共同購入・使用
- 卸売等の中間マージンカット
- 得意分野を活かした分業制・シフト制の採用
など、農水産業従事者自身による作業効率向上や売上アップ、ひいては労働環境の改善などといった「働き方改革」が可能となります。そして、ロボトラクター含めITの力はこういった新しい生産者たちの活動を、財務・税務管理などの経営面からも強く後押しできるのではないでしょうか。
なお、畜産業も「食」を支える重要な食品関連業界であり、他業種にはない苦労はあれど、法人化・ブランド化による利益率アップや、IT導入によるオートメーション化などの業務改善は、比較的農水産業より進んでいる傾向にあります。
食品加工と小売り・外食業が抱える課題
食品加工と言っても、仕入れた農産物から製粉・製油・製糖などを行うメーカーもあれば、調味料・缶詰・冷凍食品・パン・菓子など、いわゆる完成品を製造する企業まで、多種多様です。食品加工業界の国内シェアを見てみると、以下のようになっています。
- 1位:明治ホールディングス
- 2位:日本ハム
- 3位:味の素
- 4位:山崎製パン
- 5位:マルハニチロホールディングス
- 6位:日本水産
これらの大手メーカーの場合は、巨額投資による業務改善が進んでいるため、極端な労働力不足にあえいでいるという訳ではありません。しかし、大手メーカーはともかく中小の加工業者の場合、製造した商品を二次生産メーカーや卸売・小売り・飲食店などへ製造者自らが配送することも多く、車両維持費や燃料代などのコストアップや労働時間の超過などが大きな課題となっています。また、配送業者に依頼するにしても当然コストがかかりますし、配送業界自体も深刻な人手不足に陥っているため、配送料金も年々上がり続けています。これは大手と言えど、頭を悩ませている課題と言えるでしょう。
この、食品加工業が抱える流通コストのアップと労働環境の悪化は、小売り・外食業界にも当てはまることです。全国展開の大手小売り・外食チェーンは自力で物流インフラを整備し対応していますが、街のスーパーや飲食店ではそうもいきません。小売業はその傾向がとくに顕著で、高齢化による運転免許返納の流れや、地元公共交通機関の廃線などの影響により、食料品の購入が困難な買い物難民が増加している背景から、自宅宅配サービスの要望が高まっています。
ネット通販や生協などを利用するユーザーも増えた結果、宅配に対応できない中小の小売店では顧客離れが進み、長崎県のアサヒストア、高知県のユーマート、茨城県のスーパーいづみやなど、2017年は中堅どころのスーパーが相次いで廃業に追い込まれました。
飲食業界でも出前へのニーズは強まっており、配送業に従事していない一般人が、アルバイト感覚で隙間時間に配送スタッフとしてカフェやレストランなどから料理を受け取り、自転車やバイクなどで発注者の家まで宅配し、その件数や移動距離に応じて報酬を得ることができるという「UberEats (ウーバーイーツ)」というサービスも台頭して、宅食ビジネスを後押ししています。
とはいえ、このサービスは都心部を中心としたサービスのため、地方にある中小の加工業者や小売店、飲食店は、自力で配送・宅配・出前をしなくてはなりません。物流体制を最適化させ、コスト削減と業務改善することこそ、食品加工と小売・外食業が直面している共通の課題といえるでしょう。
IoTが食品業界を救う・・?
ここまで、食品業界における課題を洗い出してきましたが、これらを解決するためのポイントは、IT導入による作業のオートメーション化、物流体制の見直しによる業務の最適化、品質の向上です。そうした課題を解決すべく、食品業界では生産現場から小売店、配達に至るまで、IoT(モノのインターネット)の普及が拡大しています。
インターネットとつながることで、現状を把握し、データをデータベースへと蓄積。さらにデータの分析をすることで無駄になっていたコストを削減する、業務を見直すなどの改善策を練ることができるのです。
安価で簡単にできる導入できるIoTとしてスマートドライブが提供しているのが「SmartDrive Fleet」です。
GPS機能でリアルタイムな位置情報を把握、ドライバーとの連携も可能に
リアルタイムでの位置情報がわかることにより、効率よく的確な指示出しを可能にします。宅配の移動中もドライバーの居場所がわかることで追加の依頼をすることもでき、柔軟かつ効率的に業務を行うことができます。
走行履歴から非効率な部分を可視化
走行履歴が記録されることにより、配送ルートの最適化と無駄な配車のカットが可能に。これによってコストの削減にも役立ちます。
事務作業は自動化できる
手作業で行っていた車両管理や日報作成を自動化するうえ、集計業務も簡単に行えます。
ドライバーの安全を守り、的確な運転指導を実現
「SmartDrive Fleet」は特許を取得した安全運転診断機能を搭載しているので、危険運転を自動検知し管理者に通知をしたり、運転の癖を可視化させて後ほど管理者とドライバーが確認することができるようになっています。苦手/危険な箇所がわかれば、運転をサポートしたり、別のドライバーに任せたり、万が一の事故を未然に防ぐ対策が行えるため、事故の抑制にも一役買います。
同じ業界でも、それぞれ課題や目標は異なるものです。高精度なデータの蓄積と分析が行えるデバイスは、活用方法によっては使い方は無限にあります。ぜひ、こうしたツールを活用いただき、売上向上に役立てていただければと思います。