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CASEが起こす業界構造の大変革

CASEが起こす業界構造の大変革

モビリティ業界では、トヨタ・VWなど世界的大企業グループによる寡占状態が長らく続いていました。しかし、世界的新車販売台数の頭打ちやCO²削減を目指した動き、さらにIT化などで推進されるCASEという新たな概念によって、旧態依然としたモビリティ業界が100年に1度の変革期を迎えつつあります。
本記事ではCASEとは何かを簡単に解説した後、モビリティ業界が今どのように変化しつつあるのか、または今後どのようになっていくべきなのかついて、人的・物的要素などの面から考察しました。

CASEとは

CASEとは、Connected(つながるクルマ)・Autonomous(自動運転)・Shared & Service(カーシェアリング)・Electric(電動化)の頭文字を取った造語であり、2016年に独・ダイムラーが発表した中・長期戦略のキーワードです。

CASEを構成する要素のうちAに関してはいまだ発展途上で、法的問題も考慮すると、完全自律運転の実装は正直まだ先の話です。ただし、C・S・Eに関しては技術的にもサービスの面でもかなりの高水準で充実・普及しつつあります。とくに、モビリティの電動化は世界的にも普及が進んでおり、日本国内でおいてもHV・EVの新車販売台数は増加し、近い将来ガソリン車は新車として販売できない時代がやってくるとさえ言われているのです。

また、少子高齢化を受けてC・Sの必要性も高まっていることから、C・S・Eについては、すでにあらゆる面で業界の地殻変動が始まっていると言えるでしょう。

業界の地殻変動が起きている

ヒトやモノを目的地まで迅速にかつ安全に運ぶ。これまでモビリティが与えられた使命はそこにこの言葉に集約されていました。しかし、コロナの影響で移動そのものが見直されている中、ユーザーの要求は徐々に変化を見せています。そしてそれに伴い、確実なモノづくりと安全なインフラ整備に特化していればよかった自動車業界は、ヒト・モノ両面において全く新しい付加価値を求められるようになりました。

人的地殻変動~マーケティング意識の劇的変化~

大量生産・大量消費の時代が終焉を迎えて久しいですが、そんな中でもモビリティ業界では巨大メーカーが多くの関連企業と連携し、年間1,000万台近くの自動車を生産し続けています。

しかしCASE のうち「S」、カーシェアリングの発展と普及によって、ユーザーはモビリティの保有から共有へ徐々に興味を移しています。燃料代の高騰や少子高齢化もそれを後押ししていますが、もっとも大きな要因はモビリティを保有する意識の変化だと言えるでしょう。一昔前の若い世代にとっては、自動車は保有していることが社会人としてのステータスであり、チューニングを施した愛車を持ち寄って、自らのドライビング技術を公道で競い合う、なんてことまでありました。

ところが、広く自動車がいきわたった今では、所有していることが特別なことではなくなり、自動車はステータスシンボルから、生活必需品へと変化。また、今の車は旧車のように長距離・長時間を走行してもトラブルが起きるようなこともなく、長い間故障せず活躍してくれますし、このまま安全装備の充実や電動化・自動運転が進化すれば、ユーザーはモビリティに新たな価値を求めるでしょう。

ここでいう新たな価値こそCASEそのもの――つまり、モビリティは移動する手段から、スマホのようにいつでもつながり、電動・自動化することで誰とでも共有できるサービスへと進化しているのです。それに加え、近年の働き方改革やコロナ感染を防ぐリモートワークの推進なども、ビジネスツールとしての自動車を取り巻く人的地殻変動になっていると言えるでしょう。

物的地殻変動~環境に配慮したモノつくり~

前述した人的地殻変動に加え、モビリティ業界へ大きな影響を与えそうなのが、年々重視されている化石燃料枯渇&CO²削減といった、物的要素による“世界的”地殻変動です。

とくに、気候や生態系に深刻な影響を及ぼしかねない、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの70%を占めると言われるCO²の削減は急務とされており、国際社会も具体的な削減目標を掲げ、日本もそれに追随しています。この動きの中で温暖化の元凶のようにされているのが、化石燃料を大量消費しつつ有害ガスを排出する自動車です。日本・ドイツ・アメリカ・中国などのいわゆる自動車大国は、モビリティのCO²排出量を厳しく規制し、削減していく必要に迫られています。

エコカー減税の実施により、HV・EV自動車の普及を推進しているのはそのためですが、2020年12月、ついに日本政府は「2050年カーボンニュートラル」の一環として、2030年前半(2030年代中盤とする見方も)ガソリン車を販売禁止にする方針を打ち出しました。今のところ仮に方針が未達でも、自動車メーカーにペナルティを課すような規制ではありませんが、既存のガソリン車は次世代を担うモビリティの主力としてそぐわないとレッテルを張られたことになります。

もちろん、政府が掲げた目標は新車販売であり、中古車を含んでいないため、ガソリン車が完全に消滅するのはまだ先の話だと考えられます。しかしながら、特に石油小売業へ与える影響は甚大なものになるでしょう。また、エネルギーをガソリンから電気や水素などに転換するためには、モビリティというモノの製造過程や部品各所を変えていく必要があります。その結果、約540万人に及ぶ自動車製造および関連産業で、かつてない巨大な地殻変動が起きつつあるのです。

自動車の強さの物差しが変わる

今までのモビリティ業界は、大量消費・大量生産経済の申し子として多くの利益や利便性を人類にもたらし、世界経済は現在もモビリティによって回っていると言っても過言ではありませんでした。しかし、近年顕著になってきた人的・物的地殻変動の影響により、自動車及び自動車業界が持っていた圧倒的強さが徐々に変化せざるを得ない時期に差し掛かっているのです。

今までのモビリティが持っていた強さ~生活必需品としての台頭と繁栄~

経済はヒトやモノが移動しその対価が支払われることで成り立っており、船舶や列車に替わり中核である移動を一手に担ってきたのが自動車です。そして、1人に1台マイカーがいきわたった現在、自動車は日常生活に欠かせない「足」となりました。ただし、欧米や日本など経済が発展した国々において自動車は必要数を大幅に凌駕する飽和状態に達し、資源枯渇や環境破壊を引き起こす要因となり始め、各国はこぞって既存の自動車依存経済からの脱却を図っています。

とはいえ、自動車が世界経済を動かすうえで必要不可欠であることは、今もこれからも変わることはありません。しかし、ただ「作って売ればいい」という時代から、新しい生活様式や環境へ配慮した次世代モビリティの誕生と普及が望まれていくでしょう。

求められる「スピードと強さ」が「物体」から「情報・サービス」へ

CASEが進むにあたってスピード感と汎用性を求められ始めたのは、「誰が・どこへ・いつ・どうやって・何のために」移動しているかなど、移動に関する情報をドライバーもしくは管理者が把握できることからでした。

それはラジオやカーナビのように外部からドライバーに向け、目的地や経路の特定に役立つ情報の提供から始まり、現在はモビリティに搭載されているセンサー・カメラ・GPSなどで入手した情報を、離れた場所で精査・管理する段階に入っています。車載通信機DCMや、スマートフォン端末などによるWi-Fiテザリング、Bluetooth接続を利用したいわゆる「つながる車」がそうですが、今後は車載デバイスを介すのではなく、モビリティ自体がスマホのように走る情報端末となる時代がやってくるでしょう。

既存ユーザーは、主に燃費・乗り心地・安全装備といった性能や、内外装のデザインやカラーリングなどで自家用車を選びますが、一方でこのまま自動車のスマホ化が本格的に進んだ場合、自家用車を選ぶ基準は大きく変化すると考えられます。

というのも、スマホを選ぶ際、購入ユーザーは確かにデザインやカラーリングも気にしますが、それよりも扱える情報の多さや処理スピードの速さ、セキュリティの充実度に重きを置いているはず。そう、かつて隆盛を極めていたスポーツカーや4WDの販売が振るわなくなったのと同じく、速く・遠くまで力強く走行できるモビリティは当たり前、加えて「情報端末」としての性能が求められるようになるでしょう。

近い将来、「あの車速いね!」は時速ではなく情報を扱う速度を、「あの車強いね!」は構造的な強度ではなく、情報漏洩を防ぐセキュリティの強さを指す言葉へと変化し、併せて自動車メーカーはニーズの応じたモビリティを作っていく必要があります。そしておそらく、成熟した自動車業界が単独でそれを進めるのは無理。結果、通信・半導体メーカーなどが数多く自動車業界へ参入し、寡占化された市場を激しい競争へ巻き込んでいくと考えられます。

まとめ~自動車業界が生き残るには~

IT化が進行した現在、自動車は移動事務所のような機能も求められるようになり、コロナがなかなか終息しない中、リモートワークの拠点として利用されるケースも増えてきました。また、電動化・自動運転化が順調に進んだ場合、これまでドライバーが運転に割いていた時間を他の業務に割くことができるため、従業員1人当たりの業務効率は飛躍的に向上し、労働時間短縮などの働き方改革や人員不足解消に寄与するはずです。

しかし、電動化・自動運転化が進むほど、関連企業で独占していた自動車製造・販売に関する業界構造の崩壊が進み、他業界の参入で競争が激化し巨大自動車メーカーも今までのような経営方針では生き残っていけない時代がやってくるかもしれません。

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