【対談:後編】走行データでここまでわかる!– プリンシプルのアナリストに聞くデータを最大限に活用する方法

【対談:後編】走行データでここまでわかる!– プリンシプルのアナリストに聞くデータを最大限に活用する方法

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大里 紀雄
マーケティング部 部長
株式会社スマートドライブ
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木田 和廣
取締役副社長 カスタマーサクセス室室長
株式会社プリンシプル

この企画では、Google社からGoogleマーケティング認定パートナーとして認められ、アクセス解析を軸に事業を展開している、株式会社プリンシプルのチーフエバンジェリスト、木田和廣(きだかずひろ)さんに、データの分析結果をどのように読み解き、改善へつなげていくべきか、実際の走行データをもとに解説いただきます。

Vol.1では、急加減速数をさまざまな角度から見て、どのようなインサイトが得られるかをお話しいただき、Vol.2ではドライバーの個別データからわかることをご説明いただきました。今回はドライバー以外のデータと全体像を把握するためのデータの読み方についてお話しいただきます。

Taleauで荷台の温度を分析

木田:「Vol.1とVol.2ではドライバーの走行データを中心に分析を行ってきました。Vol.3では、さらなる可能性を広げるために、まず、荷台温度のデータから見ていきましょう。」

木田:「こちらは荷台温度のデータです。スマートドライブ社では走行データに追加する形で各種データも取得できるため、食品を配送するトラックという想定でデモデータを分析しました。
冷蔵庫内の温度を『最低温度』『最高温度』『基準温度』の3つに分類してから適正な温度を計測し、車両IDごとに平均最高気温と平均最低気温を出しました。基準温度はグレーで色づけした箇所です。」

大里:「2台だけ、基準温度から突出した車両がいますね。」

木田:「今回はデモデータですので、他と比較しやすいようにあえて異常値を付けさせていただきました。この2台を除くとほとんど車が基準値内に収まっていることがわかりますよね。
異常値が出た場合は荷台に何からの問題があと考えられるため、早急に点検を行うべきだと判断できるようになります。
ここで少し視点を変えてみましょうか。荷台温度の平均は基準値に収まっていても、この結果からは庫内の最高温度が明確にわかりません。あくまで“平均”という枠内で物事を見ているからです。しかし、本来であれば、常に適正温度を保たなければなりませんよね?」

大里:「そうですね。」

木田:「たとえば、平均値は問題なくても、何かのタイミングや時間の経過によって冷えすぎてしまったり、暑すぎてしまったりするケースもあるでしょう。
平均という言葉は単純かつ理解が簡単なため、ついつい『平均内だから大丈夫』と近視眼的に捉えてしまいがちです。しかし、そこで油断をして問題が発生するケースが非常に多い。そのため、最高気温を最大値に、最低気温を最小値で取り、下記のようなグラフで表しました。」

木田:「先ほど表示した結果と比べ、見え方が変わったと思いませんか。
冷蔵庫の基準値は-5度から5度までです。平均ではほとんどの車両が基準値に収まっていましたが、絶対値でみると全車両とも基準値を超えるタイミングがあったとわかります。
少し視点を変えるとこれだけ違いが出るのです。意外と単純な手法に見えますが、分析では多角的な視点を持つことが非常に重要なのです。」

大里:「Webの世界でもよくあることではないでしょうか。アクセス解析でも、直帰率が高いページを改善しようと試行錯誤してみたのに、実際はページのセッション数が極端に少ないことが原因だったとか。」

木田:「ですので、大局的に捉えることが大事です。そのため、一面で全体像を把握することができるよう、Tableauでは複数のワークシートを組み合わせてダッシュボードを作成できる機能を備えています。」

ダッシュボードで走行状況を把握

木田:「ダッシュボードは、誰もが一目で全体像を把握できることが重要です。企業の代表者であれば、細かい分析結果を各々のページで確認する時間が取れなかったりしますので。左上には週別の1時間あたりの急加減速回数を折れ線グラフで表示したものですが、どちらかが多いから少ないからというものではなく、どちらとも危険につながるため回数をまとめました。
企業の代表者はこのダッシュボード一面から安全運転の状況の全体感を把握するイメージです。これだけでも十分に運転傾向が見て取れますし、この結果をベースに管理者へ『来月は0.4まで下げることを目標に頑張ろう!』といった声がけをすることができます。」

大里:「これなら、代表者も管理者もわかりやすいですし、数値で出ているので目指すべき場所が明確になりますね。」

木田:「左下の散布図は、ドライバー毎の分析でお見せした1時間あたりの急加速と急減速回数の散布図です。点の一つひとつがドライバーでしたね。ここで、代表者や管理者が『このドライバーは、やけに急加速が多いけど大丈夫かな?』と点をクリックすると、次のようなページが表示されます。」

木田:「このページでは、右側で先ほど選択した特定のドライバーだけのデータのみがハイライトされます。ここから読み取れることは、月間で16時間ほどしか走行していないのに、危険な運転が多いということです。走行回数が少ない割に危険な運転が多いということは、運転の癖が強いのか、初心者ドライバーなのか…何れにせよ、注意が必要なドライバーだと言えるでしょう。」

大里:「そうですね。」

木田:「同じように、右側のグラフから特定の走行回数のドライバーを指定すると、左側の分布図がハイライトされます。データにオープンな会社であれば、こうした情報を社内に開示してもいいのではないかと思っています。」

大里:「それはなぜですか?」

木田:「ドライバー本人が自分のデータを見ることで、自主的な改善を促すことができるからです。」

大里:「なるほど。」

木田:「Webでの分析もそうですが、収集したデータを可視化して、各セクションで自主的に改善できる状態がベストであると思っているのです。そのほうが現在地と目標地点が明確にわかりますし、改善速度も上がるのではないでしょうか。」

さまざまなデータをBIツールで掛け合わせる

大里:「ここまで丁寧な解説をくださり、ありがとうございました。今回は、SmartDriveFleetで取得した走行データにダミーの従業員データと荷台の温度データを加えたもので分析を行いましたが、他にも走行データに組み合わせると面白い要素はありますか。」

木田:「ドライバー歴ですね。ユーザーIDに紐づければいいだけなので分析も難しくありません。運転が未熟だから危険な挙動をしてしまうのか、慣れきっているから危険運転をするのか…運転歴によってどんな結果が現れるのか気になりますし、傾向がわかればドライバー歴ごとに適切な指導を行うこともできます。また、事故歴や従業員満足度といったデータもあると、さらに視野を広げた見解ができるのではないでしょうか。」

大里:「ときどきWebの話が出ていましたが、Webの解析とデータの読み取り方は似ていますか?」

木田:「非常に近いと思います。Webでいうセッション、つまりWebサイトに入ってきた起点の部分はエンジンをかけた走行開始のタイミングと同じですし、離脱はエンジンを切ったタイミングと同じです。1セッション=1走行、1ユニークユーザーの訪問回数も、1ドライバーの走行回数に置き換えることができます。」

大里:「Webサイトの滞在時間は、ドライバーの走行時間と同じような視点で考えることができるんですね。
非常にきめの細かいログデータも分析に必要な時がありますが、今回の走行データのようにある一定のレコードでまとまっているといいですよね。他には何か分析されました?」

木田:「車両の稼働率も分析しましたが、当たり前すぎて面白くないかなぁ、と思って深く掘り下げませんでした。」

大里:「未稼働の車両削減にも使えますか?」

木田:「車両ID別の走行時間で見ればいいので、このグラフを見れば一目瞭然ですよ。」

大里:「こちらは、経営者様にとって非常に重要なレポートになります。稼働率の高い車両と低い車両をうまく割り振ってリソース配分をするとか、単純に不要な車両を削減したりできるのではないでしょうか。
プリンシプル社はマーケティング関連のデータ分析が専門領域だと思うのですが、今回のようにIoTで取得したデータの分析も対応されているのでしょうか?」

木田:「もちろん対応可能です。たとえば、クレスト社が提供しているESASY(エサシー)というトラッキングツールでもさまざまな視点で分析を行っています。人の顔をカメラで検知できるため、店舗のディスプレイが見られた回数や店舗前の交通量数など、取得したデータを統合分析し、店舗経営に役立てていただいております。」

大里:「エサシーは、入店率も計測できるそうですね。」

木田:「はい、店舗前の通行量と店舗の入り口を通過した人数から、入店率を割り出すことができます。ディスプレイがどのくらい通行人の興味を引いていたか、それが時間帯によってどのように変化するのかなど、リアルな店舗状況のデータが可視化できますので、今まで見えなかった費用対効果や適切なターゲット戦略を組み立て直すことができるのです。」

大里:「今後、IoTデータの分析はニーズが増えていきそうですね。今回の解説で、改めてデータは取得した”その先”が重要だと理解しました。本日はありがとうございました!」

株式会社プリンシプル
株式会社プリンシプルはGoogle社からGoogleマーケティング認定パートナーとして認められ、アクセス解析を軸にデジタル広告、SEO、DMP構築、Tableauによるデータビジュアライズなどを支援するデジタルコンサルティングファームです。社員数約70名(アルバイト、インターン含む :2019年3月時点)。
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台4-2-5 トライエッジ御茶ノ水10階

Tableauとは>
米国シアトルに本社を置くTableau Software社のBI製品群。
デスクトップアプリケーションのTableau Desktopで実現したビジュアル分析結果を、Tableau ServerやTableau Onlineといったクラウドソリューションと連携して、社内の情報共有基盤として利用する。
データを活用して業績を伸ばしたい企業に多く採用されており、行政、通信、エネルギー、金融、製造、小売、サービス、旅行と採用企業は業界を問わない。
ガートナー社のマジック・クアドラント(分析とBIプラットフォーム部門)で7年連続のリーダーポジションを獲得。

【木田和廣(きだかずひろ)プロフィール】
株式会社プリンシプル
取締役副社長 / チーフ・エバンジェリスト

商社、ソフトバンク系ネットベンチャーを経て、2004年からWeb解析業界でのキャリアをスタートし、2011年より現職。各種セミナーでの講師実績多数。Googleアナリティクス、Tableauについての書籍執筆。
Google Analytics Individual Qualification(GAIQ)、Tableau Desktop Certified Professional等の資格を保有
2017年12月Tableau Jediを拝命。

【大里紀雄(おおさとのりお)プロフィール】
株式会社スマートドライブ
マーケティング/PR

Google アナリティクスを軸としたコンサルティングや、プライベートDMPの構築に長年従事し、前職では外資系マーケティングツールベンダーにてシニアビジネスコンサルタントとして活躍。
2019年3月よりスマートドライブにてマーケティングおよびPRを担当している。

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