注目される電気自動車と定額充電サービス
そんな自動車に関するサブスクリプションサービスのなかから、今回は電気自動車(EV)の定額充電サービスに着目してみましょう。
電気自動車は外部から充電した電気を動力源とし、電動モーターにより走行する車のことです。ガソリンを使わないため、走行時のCO2排出はありません。そのため資源制約や環境問題への関心の高まりを背景に、地球に優しいエコカーとして注目を集めています。
21世紀に入って以降、日本の各自動車メーカーが電気自動車を開発する一方で、その普及がなかなか進まずにいるという状況が続いていますが、本格的な普及に向けての大きな課題のひとつとなっているのが充電インフラです。
経済産業省は2012年度の補正予算で「次世代自動車充電インフラ整備促進事業」として1,005億円の補助金を計上、2014年3月までに全国に普通充電器6万基と急速充電器4万基を整備する方針を発表しましたが、実際には設置が進まず、2014年3月時点で充電器の数は合計約5,000基しかありませんでした。
そこで2014年5月26日にトヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、三菱自動車工業の4社は、電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)向けの充電インフラ会社である「日本充電サービス」(略称:NCS)を合同で設立。
充電器の設置者に対して設置費用の一部や維持費、電気代などのランニングコストを肩代わりする代わりに、充電器の利用権を取得し一括して管理する事業を開始しました。
NCSグループが管理する充電器を利用するためには、日本充電もしくは各自動車メーカーが発行した、会員認証を行うためのICカード(充電カード)が必要になります。
カードを所有するためには月額料金を支払う必要があり、会員となったユーザーは日本充電のインフラであればICカードを使ってどこでも充電できるようになるのです。
NCSネットワークの認証カード一覧
日本充電サービスが発行している認証カードは1種類ではありません。同じNCSネットワークの認証カードでも、日本充電サービスが発行しているもの、日産やトヨタなど自動車メーカーが独自に発行しているものなどいくつかの種類があるので、電気自動車の購入を予定している方は、今のうちから知っておくといいかもしれません。
NCSカード
NCSカードは日本充電サービスが直接発行している認証カード。
「急速充電器用」「普通充電器用」「急速・普通併用」の3種類があり、短時間で充電ができる急速充電器に対応したカードは、月会費が割高となっています。
発行元:日本充電サービス
加入可能ユーザー:すべてのユーザーが加入可能
登録手数料:1,400円(税抜)
月会費:1,400~4,200円(税抜)
JTBおでかけカード
JTBおでかけカードはトラベル&コミュニケーション事業を手掛ける、「株式会社JTBコーポレートセールス」が発行元。
「おでかけcardレギュラー」と「おでかけcardプレミア」の2種類があり、プレミアカードのユーザーになれば急速充電器も利用できるようになります。
発行元:JTBコーポレートセールス
加入可能ユーザー:すべてのユーザーが加入可能
登録手数料:1,000円(税別)
月額利用料:2,500~5,000円(税別)
日産ZESP(日産ゼロ・エミッションサポートプログラム)
日産ZESP(日産ゼロ・エミッションサポートプログラム)は日産の電気自動車「リーフ」のオーナーが利用できる、サポートプログラム。
会員はNCSグループの充電器のほか、日産販売店舗の充電器も自由に利用できます。
発行元:日産自動車
加入可能ユーザー:「リーフ」のユーザーのみ
登録手数料:1,500円(税別)
月額利用料:3,000円(税別)
三菱自動車 電動車両サポート
電動車両サポートは三菱自動車製の電気自動車オーナーのみが加入できるサービス。
会員はロードサービスや優待サービスなど、各種サービスも利用可能となります。
発行元:三菱自動車
加入可能ユーザー:三菱製電気自動車のユーザーのみ
入会金:1,500円(税抜)
月額利用料:500~1,500円(税抜)
PHV Drive Support プラス
PHV Drive Supportプラスは、トヨタのプラグインハイブリッドカー「プリウスPHV」のオーナー向けサポートサービス「PHV Drive Support」の有料オプションとして追加できる充電サービスです。
発行元:トヨタ自動車
加入可能ユーザー:「プリウスPHV」のユーザーのみ
入会金:2,000円(税抜)
月額利用料:300円(税抜)
自動運転車が新しいサブスクリプションサービスを生む?
記事前半で紹介した「NOREL」がビジネスとして成功を収められるかは未知数ですが、今後は「車の自動運転化」が進むことよって、サブスクリプションサービスが当たり前になるかもしれません。
アメリカで車のライドシェアサービスを提供する「Lyft」の共同創業者兼プレジデントであるジョン・ジマー氏は、自身のブログで「2025年には自動運転車が登場したことによってマイカーを所有する人がいなくなる」とコメント。また、テスラモーターズのCEOであるイーロン・マスク氏も、「自動運転車への移行は、自動運転車のオーナーが他人へ車両を貸し出すネットワークという形で進む」と予想しています。
電気自動車や自動運転化は、自動車関連の市場や社会インフラ、国の政策などとともに、時代や社会全体の変化に応じてただ移動するだけではなく、その役割を大きく変えていくことでしょう。