7月25日から27日にかけて、タイ最大級のスタートアップイベントStartup Thailandが開催されました。今回、官民連携でスタートアップを支援するJ-Startupプログラムの一環として参加した4社と事務局のジェトロが対談を行いました。
肌で感じたタイマーケットの可能性や、イベントで感じたことなどを紹介します。
【対談者】
ジェトロ(日本貿易振興機構)
坂口 裕得子(さかぐち ゆうこ) 以下:坂口
株式会社チャレナジー
小林憲明(こばやし のりあき) 以下:小林
株式会社ABEJA
竹田孝紀(たけだ たかのり) 以下:竹田
Uzabase Asia Pacific Pte.Ltd.
伊野紗紀(いの さき) 以下:伊野
株式会社スマートドライブ
柚村 大輔(ゆむら だいすけ) 以下:柚村
坂口:
このスタートアップタイランドのイベントにご参加いただいた4社に話を伺っていきたいと思います。それでは、まず自己紹介からお願いします。
小林:
我々はチャレナジーという会社でして、社名はチャレンジとエネルギーをからきています。「エネルギーシフトを起こす」というミッションで、安心安全で再生可能なエネルギーを全人類に届けたいという想いで2014年に創業した会社です。
私自身はこのチャレナジーに2018年の9月にジョインしまして、その前は南米のエクアドルに6年ほど住んでました。ずっと昔から環境保全に興味があったので、会社のビジョンに共感してチャレナジーに参画しました。
竹田:
ABEJA(アベジャ)の竹田と申します。ABEJAは「豊かな社会を実装する」というビジョンを掲げて、今はマシンラーニング、ディープラーニングを使って、世の中に社会構造が変わるようなイノベーションを起こそうとしている会社です。
私自身は新卒でフロンテオというAIベンチャーで事業開発や新規事業に携わっていました。その後はIT企業のCVCに転職し、東南アジアでスタートアップ向けの投資活動を2年ほど行なっていました。その後、やっぱり自分で事業作る方が楽しいと思い、会社の方向性に共感したABEJAにジョインして、以降はタイの事業開発をずっと担当しています。
伊野:
ユーザベースの伊野です。よろしくお願いします。ユーザベースは2008年創業で、今はNeswPicksをはじめ、様々なプロダクトがあるのですが、最初に始めた事業はSPEEDA(スピーダ)です。元々は創業者が徹夜してビジネス情報をかき集めて、情報収集に苦労したということが起業の原点で、ビジネス情報へいかに効率的にアクセスし、アウトプットまでもっていけるか?というところに主眼を置いて開発されたプロダクトです。
私自身は新卒がジェトロでして。対日投資部で、外国企業を日本に誘致するという仕事をしてました。その頃から調査業務をしていて、情報提供することによってビジネスを拡大するか?ということろにパッションを持っていました。ジェトロを卒業したあとはコンサル会社で働いていました。その頃にSPEEDAに出会って「これから海外展開をしていく」と聞いて、創業メンバーに「海外展開は私がやりたいです」と時間談判して、東南アジア展開のタイミングで、シンガポールに赴任しました。
柚村:
スマートドライブの柚村です。事業内容としてはモビリティデータを活用したサービスと、プラットフォームの開発および運営をやっている会社です。具体的なサービスとしては大きく3つありまして、B2Bで法人のお客様向けのクラウド車両管理システムの提供、2つ目は個人のお客様向けにB2C向けのお客様にCRMプラットフォームの開発、3つ目はテレマティクスの保険の開発といったところをやっております。
創業からもうすぐ6年になるのですが、これまでずっと日本でビジネスをしてきまして、おかげさまで国内では300社以上のお客様に利用されていて、デバイスの出荷ベースでは3万台以上出荷しています。
私のバックグランドとしては、最初に入ったソニーでは20年ほど働いてまして、事業開発、商品企画に従事し、おもにアジアパシフィック地域の海外マーケティング活動も担当していました。その後、三菱自動車にはいりまして、自動車の事業に携わるようになって、マレーシアのマネジメントをしておりました。そのあとに現職のスマートドライブ に来ました。
坂口:
面白いですね。こうやって改めて皆様の話を聞くと、多種多様なバックグランドがあって個性的な方々集まっていると思いました。
肌で感じたマーケットの可能性
坂口:
今回にタイにきて実感したこと、マーケットの可能性や期待感や、課題感など感じたことをお話いただければと思います。
小林:
弊社としては初めてのタイでの市場調査でした。なので、事前にリサーチでは「タイはそこまで風力ポテンシャルがない」と仮説を立てていました。しかし、実際にタイの会社様と直接対面で話す機会があって、製造拠点としてのポテンシャルに可能性を感じました。
坂口:
風の強さって、地域によって結構変わるのですか?
小林:
例えばヨーロッパは偏西風があるので、年中一定の風が吹いています。一方で日本は山があったり、台風があったり、風力ポテンシャルは結構高いのですが活用するのが難しいのです。世界の場所によって、風の条件は変わってきますね。
また、ヨーロッパには今の段階では参入する予定はなくて、逆にニッチなマーケットとして、熱帯低気圧やサイクロンが来るようなところに風車を設置し、ニッチ市場を押さえてから、将来的には他の地域も、と考えています。
竹田:
弊社のタイでの事業開発は、2年前のシンガポール法人設立以降、出張ベースですが、着実に進めておりまして、ポテンシャルを感じています。ここ最近での変化としては、JETROや日本大使館の方々からの支援もあり財閥系の企業へもアプローチできるようになってきて、、もう少しでおもしろい事例が財閥系企業と一緒に作れそうです。
坂口:
日本の企業ですと、新しい取り組みが心配な場合、事例が沢山ないと心配で重い腰がなかなか上がらない。というケースがあると思います。これはアジア各国の財閥系企業でも同じような形なのでしょうか?
竹田:
層によると思います。エグゼクティブ層や財閥の上の方の人たちは頭がキレる人が多いですね。日本の経営層以上にAIのこと学んでいて、誰でもAIモデルが使える時代がくるからこそのプラットフォーム、という思想に対して共感をいただけることに驚きました。
中堅層は日本と似ていると思います。事例が必要だったり、しっかりとエデュケートしないと進まないと思います。
伊野:
我々の場合、日系企業のマーケットの方が多いです。日本法人やシンガポール法人からの紹介、親会社が使っているから子会社でも使う、といった紹介ベースのサイクルがうまく回っています。
日系マーケットの方は安定というか、導入はスムーズです。ただ、やはりローカルマーケットの方が市場規模が大きいので、いかにどう攻めていくかが課題であり期待であります。
タイの企業、とくに財閥系の企業を押さえると、どこの企業が使っている、という実績があるだけで反応が全然違います。一方で、財閥系企業のライトパーソン、ライト部門に入っていくのがすごい難しいので、今回ジェトロさんが繋いでくださったのはすごく感謝しています。
柚村:
モビリティのマーケットの可能性は大きいと感じています。調べていくとプレイヤーは沢山いるのはわかりますが、誰がNo1なのかよく分からない手探りな状態です。私は東京をベースにして調査してますが、スマートにかっこよく市場開拓しようと思っても、あまりワークしないのです。
タイに乗り込んできて1週間いるだけで様々な方に出会えましたし「冷たい対応されるだろうな」と思ってた方が実際に話をするととても興味をもって話を聞いてくれたりもしました。タイの現地にいるからこそ、できることが沢山あるのです。
>>>後編へつづく