GCP(Google Cloud Platform)がモビリティ業界にもたらす未来とは?

GCP(Google Cloud Platform)がモビリティ業界にもたらす未来とは?

事業主として会社を率いたり、総務職種に従事したりするなど、クラウドサービスによる業務効率化に興味をお持ちの方なら、一度は「GCP」というワードを耳にしたことがあるでしょう。

しかし、GCPがそもそもどのような役割を担い、どのように有効活用できるのか、深く理解し、その真価を発揮できるような運用をしていますか…? 本記事ではGCPの概要と活用法を解説し、GCPがモビリティ業界にもたらしつつある変化についてご紹介します。

GCPとは何か?

私たちの生活に根深くITが浸透している現代、業種・企業規模に関わらず、多くの企業がなんらかのWEBサービスを介して顧客とコミュニケーションを取ったり、クラウドサービスを活用しながら労務管理や財務管理などの日常業務をこなしたりしているのではないでしょうか。

一昔前までは、WEBやクラウドを運用する際に必要な基盤となるシステムを自前で構築する必要がありましたが、今ではAmazon Web Service (AWS)やMicrosoft Azureなど、多くのインフラサービスが提供されています。

本記事で取り上げるGCP (Google Cloud Platform)もそんなインフラサービスの1つで、Google がクラウド上で提供している、Google App Engine、Google Compute Engine、Cloud Datastore、BigQueryなど、サービスの総称を指します。

GCPの構成サービス例1「Google App Engine」

Google App Engine (GAE) とは、2008年4月にGoogle社が提供を始めた、アプリケーション開発に必要な実行環境を利用するモデル、いわゆる「PaaS」です。このほかにHeroku・AWS ・Azure App Serviceなどが挙げられますが、GAEはその中でも古参。

GAEの売りは、コンピューター言語で作成した自らのアプリを、セキュリティが強固で環境も安定しているGoogleの内部インフラ上で運用・管理できるため、アクセス急増にも柔軟に対応できることから、ユーザー数の非常に多い大規模サービスから信頼されています。

また、アプリなどをスモールスタートさせ、事業の成長と共にスケールする場合、アーキテクチャを大幅変更する必要がないという手軽さや、PHP・Python・Java・Goなど、各言語それぞれにソフトウェア開発キット が用意されている点も評価されています。

GCPの構成サービス例2「Google Compute Engine」

Google Compute Engineは、Google のインフラ上において仮想マシン(VM)を作成・運用できるサービスで、業界屈指のコンピューティング性能を誇り、ユーザーの目的に合わせ最適な仮想マシンを構築することが可能です。

GCEの利点は、資金や時間をそれほどかけることなく、Googleのコンピューティングを始めストレージ・ネットワークを活用した大規模処理や分析が可能となる点で、幅広いニーズに対応するため、次のようにタイプの異なる6つのVMインスタンスがラインナップされています。

  • E2・・・汎用型VMインスタンス、コスパの高さが特徴で、web サービスや業務管理アプリ、開発・テスト環境などに適している。
  • N2 & N2D・・・E2同様コスパ重視の汎用型VM インスタンス。webサービスやアプリ配信などに利用される。
  • C2&M2&A2・・・ワークロード最適型の VM インスタンス。ゲーム開発やリアルタイムデータの分析、機械学習や超並列計算などに用いられるためいずれもCPU・GPU・メモリなどがハイパフォーマンスだが、その分コストは高い。

GCPの構成サービス例3「Cloud Datastore」

Cloud Datastore は非常に優秀な拡張性を持つアプリ用NoSQLデータベースで、提供するアプリの安定性を維持するため、欠かすことのできないコンテンツです。

アプリのデーターベースは、「SQL」と呼ばれるコンピューター言語を使用して、データを出し入れするRDBMS(Relational Database Management System)と、前述したNoSQLの2つに大きく分類できます。

NoSQLは「Not only SQL」の略称、つまりSQL言語を使用せずデータを出し入れするデータベースのことで、PHPなど一般的なプログラミング言語のみで構築可能な簡素さが利点で、純なデータを大量に管理するのに向いています。そんなNoSQLデータベースを、ハードウェアを用意して構築する必要も環境を一から整備することもなく、ネット回線に繋がってさえいればいつでもクラウド上で利用できる、それがCloud Datastore です。

GCPの構成サービス例4「BigQuery」

データベースに対する命令をクエリ(Query)と言いますが、ユーザーの命令に従いビッグデータを超高速で解析するのが、最後に紹介する「BigQuery」。

SNSやソーシャルゲームなどで蓄積されるユーザーログは、開発者にとってユーザーの動向を分析しサービス改良に反映させる有益な情報ですが、すべてを保存すると膨大なデータ量になってしまいます。BigQueryは、1つの行をひとかたまりのデータとして扱い、データの追加も行単位で行う「行指向(横方向)データベース」ではなく、列指向(縦方向)で読み込みや保存を行うカラム式データベースです。

その結果、命令(クエリ)の対象となる列のデータにしかアクセスする必要がないため、ネットワーク上で送受信される信号を最小化でき、かつ類似性の高い同列データの圧縮がスムーズなことから、データ圧縮率が約3倍になるという調査結果もあります。また、ユーザーからのクエリを受け取るルートサーバーから、処理を担当している多数のリーフサーバーに対し、クエリがさながら根で吸収した水分や養分が、大樹の葉の隅々まで行きわたる様を思わせる「ツリーアーキテクチャ」という構造で広がっていきます。

この2つの仕組みが連動することにより、BigQueryは膨大なデータを高速かつ分散して効率よく処理することができるのです。

GCPを活用して実現できること

GCPの凄いところは、資源や資金が少なくともネット環境さえ整っていれば、世界的情報関連企業であるGoogle社員と同じインフラ上で、自社のアプリを開発・運営できることです。

事実、Google App Engineのおかげで自社製のアプリを展開しやすくなり、Google Compute EngineのVMインスタンスを活用した業務管理ツールや、低コストで開発されたソーシャルゲームも多数リリースされています。また、複雑かつ膨大なデータを扱うウェブ管理者やシステム管理者にとって、シンプルで汎用性の高いCloud Datastoreは頼れる存在ですし、何より難解なデータベース構築用言語であるSQLを習得する必要もありません。

個人や法人さらに業種や規模に関わらず、ネットユーザーである以上GCPを活用することで、できることの範囲は広がりますが、解説したサービスの中で最もモビリティ業界において活用されているのは、「BigQuery」です。BigQueryを活用すれば、アクセス履歴やシステムエラー履歴など、数万、いや数億行に及ぶ膨大なログを瞬時に解析し、アプリケーションのサービスとしてリアルタイムで反映させることが可能です。

GPSやセンサーが搭載されている車両の走行履歴や運転アクションを含む膨大なデータを解析することで、配送ルートの最適化やスケジュール管理、ドライバーの安全運転教育など、車両管理業務の効率化を低コストで実現することができるのです。

モビリティ業界×GCP=どんな未来が待っている?

前項でモビリティ業界において、現在最も浸透しているGCPサービスはBigQueryと述べましたが、総合的に見てGCPは自動運転や共有と関係が深いようです。ここでは、GCPが今よりさらにモビリティ業界に浸透した場合どんな未来がやってくるのか、その一端を感じさせる具体的な事例をいくつか紹介しましょう。

Google系Waymoが自動運転タクシーを商用展開

Google系の自動運転開発会社Waymo(ウェイモ)は、2018年12月5日、米・アリゾナ州の都市フェニックスで自動運転タクシーの有料商用サービス「ウェイモワン」ををスタートさせました。

運用開始された商用タクシーには運転動作に人間が全く関与しない、いわゆるレベル4相当の自動運転技術が搭載されていましたが、当初は安全性確保のため、運転席にセーフティードライバーが同乗していました。しかし、約1年のローンチを経て、2019年11月からはドライバーが同乗しない「完全無人」へ踏み切り、世界各国から注目され話題を集めています。

ウェイモワンでは、自動運転の際必要な複雑で膨大な量に及ぶシミュレーションを行うため、Google Cloud TPU(Tensor Processing Unit)とGPUを組み合わせCloud TPUを構築、AIによる高速処理を可能としています。

Googleとフォード コラボレーショングループ「Team Upshift」を設立

GCPのAIや機械学習、データの分析能力が高いと判断したフォードは、自社開発の自動運転車運用時のパートナーとしてGoogleを選択、コラボレーショングループ「Team Upshift」を設立するなど、今後中国を除く世界のほとんどの市場において、GCPを利用していく方針を打ち出しました。

また、両者は2023年から6年間パートナーシップを締結することをすでに発表していますが、この間販売されるフォード及びリンカーンの各モデルには、Googleのアプリやサービスを内蔵した「Android」が搭載されることになっています。フォードの会長兼CEOのジム・ファーリーは、「現在フォードは歴史的変革期を迎えているが、Googleとの連携によってEV化・コネクティビティ・自動運転など、近代化に向けたイノベーションが生まれるだろう。」と、Googleとのパートナーシップについて語っています。

市場におけるGCPのシェアは10%に満たないが…。

Googleが提供しているクラウド用アプリ基盤に概要とその活用例について解説しましたが、同じく世界的インターネット企業であるAmazonには「Amazon Web Service」が、マイクロソフトにも「Microsoft Azure」というアプリ用プラットフォームが存在します。調査会社Synergy Research Groupが2018年11月に発表したデータによると、PaaS市場におけるGCPのシェアは10%程度、約34%と世界NO,1シェアを誇るAWS 、第2位のMAに続く第3位に甘んじています。

しかし、どのPaaSも自動車向けソリューション、とくに自動運転技術やコネクティッドカーに関する技術開発に躍起な中、GCPの持ち味であるAIや機械学習といった分野での評価が高いため、今後、モビリティ業界でGCPの存在が大きくなっていくでしょう。

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